今回は2025年2月に発売された三菱鉛筆のZENTO(ゼント)を紹介します。
ZENTO(ゼント)は三菱鉛筆が6年の歳月をかけて開発した次世代の水性インク「ZENTOインク」を搭載したボールペンです。
「シグニチャーモデル」「フローモデル」「スタンダードモデル」「ベーシックモデル」と4モデルが同時発売されました。
今回は4モデルそれぞれの特徴などを詳しくレビューします。
この記事をおすすめする人
サラサラとしたなめらかな書き味のボールペンが使いたい
耐水性・耐光性に優れ、発色のいいボールペンを探している
4モデルそれぞれの特徴を知りたい
三菱鉛筆ZENTO(ゼント)の特徴
三菱鉛筆が6年の歳月をかけ次世代の水性インクを開発

ZENTOインクは三菱鉛筆が開発した次世代の水性インクです。
その特徴は水性インクのサラサラとした書き味と発色の良さをさらにブラッシュアップさせ、かつ速乾性、耐水性、耐光性にも優れた高性能なインクです。
ZENTOのリフィルは「C-300系」

ZENTOに採用されているリフィルはユニボールに採用されているゲル「K」型と同じサイズになっています。
ゲル「K」型は汎用性の高い「C-300系」としてよく知られており、同じ規格にはゼブラの「JF芯」なども含まれています。
ZENTOのリフィルをいろんな軸に入れて楽しむこともできますよ。
ZENTOインクの特徴や書き味、速乾性、耐水性など、またいろんな「C-300系」軸との互換性の検証をこちらの記事で詳しくレビューしています。
よかったら参考にして下さい。
ZENTO(ゼント)軸それぞれの特徴

先に紹介した通り、ZENTO(ゼント)には「シグニチャーモデル」「フローモデル」「スタンダードモデル」「ベーシックモデル」と4モデルがあり、それぞれに特徴があります。
ZENTO(ゼント)「シグニチャーモデル」の特徴

ZENTOの軸で一番高価なのがこの「シグニチャーモデル」です。
「シグニチャーモデル」と命名されていますが、本来の意味とはちょっと違うのでは?というツッコミはさておき、今は非常に手に入れにくくなっているモデルです。
というのも、店舗での陳列ポップにはこのモデルが2本しか置くスペースがなく、店舗が在庫として多く持てないようです。
早い者勝ちになってしまい、よほどこまめにチェックしていないと気付いたら売り切れとなってしまうようです。
争奪戦がとなるほど人気のモデルですが、三菱鉛筆のカタログを確認しても「限定販売」という記載はないので、今手に入らなくても気長に待てば購入可能となる日がくるかなと思います。
軸は金属と樹脂が複雑に融合した逸品
パッと見単純な構造に見えて、実はよくできている軸です。
総金属製(主にアルミ)のマット塗装かなという印象ですが、前軸、後軸は金属と樹脂でできているようです。
技術的な部分については詳しくは分かりませんが、触れることでその違いが分かります。
まず前軸のグリップ部分。


内側には真鍮という金属が使用されており、グリップする部分は金属のようなひんやりした感じがありません。
真鍮の外側にはABS樹脂が使用されています。
この樹脂が金属としっかり融合しており、金属と一体化しています。


後軸も同じで中央部にくるリング部分は金属ですが、その後ろは樹脂ですね。
この樹脂と金属の一体感はちょっと感動ものです。
キャップは金属製でマグネット式

シグニチャーモデル最大の特徴がマグネット式のキャップです。
水性ボールペン(ローラーボール)らしいキャップ式というのもいいですし、さらにマグネット式というのが珍しくていいですね。


マグネットがけっこう効いてて、外す時はけっこう力を入れないと外れません。
閉めるときのあとちょっとで閉まるというときに磁力が効いて吸い込まれるようにカチッと閉まると、ついニヤッとしてしまいます(笑)
キャップを後軸につけるときも同じように磁力でカチッとくっつきます。
開閉時だけマグネットが効く絶妙な素材配置
キャップの開閉や筆記時の後軸への付け外しの時だけ磁力がしっかり聞くようにデザインされています。

キャップのこの辺りにクリップがくっつくのでここに磁石がついているのが分かります。
軸側にはクリップを近づけてもくっつかないので磁石はついていないですね。


キャップの磁石がある辺りを軸に近づけても磁石は反応しませんが、口金と軸のこの銀色部分を磁石のある部分に近づけるとゆるくカチッとくっつきます。
軸が全部金属だとどこでも磁力が効いて、どこでもくっついてしまいます。
金属と樹脂を絶妙に配置して、必要なところにだけ磁力が効くようにデザインされているんですね。
見た目だけでなくかなり手の込んだ仕掛けになっていて、キャップを開け閉めするだけでニヤニヤが止まりません(笑)
重さは22.25g

重さを測定したところ22.25gでした。
金属と樹脂でできているので思ったよりも軽量に仕上がっている感じですね。
収納時はコンパクト

キャップを閉めた状態で長さは122.82mm。


キャップを外した状態で118.82mm、キャップを軸につけた状態で132.60mmでした。
収納時はコンパクトに持ち運べ、筆記時にはしっかりとした長さがありますね。
重心は軸中央にある金属あたりになります。


キャップを軸につけると扱いにくいというほどではないですが、若干重心が上になってしまいます。
長さはやや短くなりますが、キャップを外した状態だとかなり軽量になりバランスもいいので取り回しはしやすいですね。
金属部の塗装が美しい

キラキラと光るパール塗装がとても美しいです。
そして手触りがシルクのような感じです。
わずかにザラっとしたマットな感じはありますが、このキメがとても細かくシルクのようななめらかな感じです。
あまり筆記具としてはあまり慣れない手触りですが、その心地よさが何とも言えません。
グリップの樹脂部分は手になじむ

樹脂部分は最初ラバーかなと思うほどしっとりとした感じでグリップ感がとてもいいです。
程よい太さでペン先に向けて徐々に細くなっていくデザインになっています。
クリップはユニボールのワイヤークリップを上質にした感じ

デザインとしてはユニボールの名を冠しているだけあってよく似た印象です。
ユニボールのイメージはそのままに板状にして上質感を出したというところでしょうか。
程よい弾力があり、メモ帳や胸ポケットなどにはスッと挟み込める形状です。
取り出しもしやすく実用的なデザインになっていると思います。
カラーは2種類

今回僕が買ったのは「メタリックブラック」です。
購入時はボールサイズ0.5mmのリフィルが装填されています。
もうひとつ用意されているカラーは「シルバー」。
購入時はボールサイズ0.38mmのリフィルが入っています。
どちらも落ち着いた雰囲気でかっこいいですね。
値段は税込定価3300円

「シグニチャーモデル」はゼントのモデルの中で一番高価です。
税込定価3300円と結構高価ですよね。
高価ですが、争奪戦となるほど人気が高いです。
手触り、質感、使い心地などを考えると十分納得できる価格かと思います。
ZENTO(ゼント)「フローモデル」の特徴

つづいて「フローモデル」の紹介です。
デザインはサイズ感やノック式といったところが「スタンダードモデル」「ベーシックモデル」とほぼ同じですね。
グリップ部はアルミ製でアルマイト塗装が施されている

「スタンダードモデル」「ベーシックモデル」との大きな違いはグリップ部分です。
アルミ製でアルマイト塗装が施されています。
以下はアルマイト塗装についての解説です。
興味のない方はサクッと読み飛ばしてください(笑)
アルマイト塗装とは
アルミニウムの特徴
アルミニウムは錆びにくい性質がありいろんな分野で広く活用されています。
アルミニウムの欠点としては、どこかにぶつけるといった機械的な損傷や薬品の付着などの化学的な影響で損傷した場合、腐食してしまいます。
アルミニウムだけではそこまで強度に期待が持てないため、多くの場合アルミニウムに他の鉱物を混ぜた合金にして使用します。
ただ合金にすることで耐食性が低下してしまいます。
そのため多くの場合でアルマイトという処理を行います。
アルマイト処理とは
アルマイト処理とは、アルミニウム表面に陽極酸化皮膜を作る処理です。
アルミニウムの耐食性・耐摩耗性の向上を目的として行われます。
アルマイト塗装とは
アルミニウムを陽極酸化処理して着色する技術です。
アルミニウムの表面に酸化被膜を形成し、その層に染料を浸透させて着色する方法です。
これにより耐久性、耐食性を向上させさらに美観をも向上してくれます。
通常の塗装でも表面をコーティングすることは可能ですが、摩擦や衝撃で塗膜が剥がれやすいです。
塗膜が剥がれることで腐食しやすくなってしまいますが、アルマイト塗装を施すことによって作られた酸化被膜は剥がれにくいです。
そのため、腐食しにくく摩耗にも強くなるというメリットがあります。
デメリットとしては使用する染料が塗装に比べると少なく限定されるので、いろんなカラーが作れないという点です。
「フローモデル」のグリップはアルミニウムで軽量というメリットに加え、アルマイト塗装によって、強い皮膜で覆われているので腐食しにくく、摩擦にも強くなっているという事です。
見た目もかなりゴージャスな仕上がりになっていますね。
派手さを抑えた上品な輝きが高級感を演出してくれていますね。
グリップはややマットな手触り

金属なので触るとひんやりします。
手触りはややマットな手触りでザラっとした感じがします。
「シグニチャーモデル」で感じたシルク感は「フローモデル」にはないですね。
手にはなじみやすく、しっかりとグリップができて滑りにくいです。
全長は139.92mmで重さは13.87g


ノックしていない状態での全長は139.92mm、重さは13.87gでした。
軸全部が樹脂製のボールペンが10g程なので、それに比べると若干重くなっています。
3g程の差はありますが、体感的には総樹脂製のボールペンとほぼ同じですね(笑)
軽量で取り回しがしやすいです。
カラーは全部で4種類

僕が買ったのは2種類。
ひとつは樹脂部分がパステルブルー「フローライト」。
購入初期に装填されているリフィルのボールサイズは0.38mmです。
そしてもうひとつは樹脂部分がグレーの「ヘマタイト」。
購入時に装填されているリフィルのボールサイズは0.5mmになります。
この他、樹脂部分がサーモンピンクの「アガット」と樹脂部分がマリンブルーの「ジェード」があり、カラーは全部で4種類です。
購入時のボールサイズは「アガット」が0.38mm、「ジェード」が0.5mmです。
「シグニチャーモデル」よりすこし華やかでゴージャスでありつつ、落ち着いた印象のあるカラーになっていますね。
クリップも軸色に合わせた塗装が施されていますね。
値段は税込定価1100円
「フローモデル」は「シグニチャーモデル」について高価です。
こちらも店頭のポップに残っていればラッキーぐらいの争奪戦となっています。
シングルボールペンで税込定価1100円というのは若干高価な価格帯になるかと思います。
ノック式で使いやすく、それでいて上質感があるので十分満足できる価格かと思います。
ZENTO(ゼント)「スタンダードモデル」の特徴

その名の通り標準仕様になります。
軸の素材には再生材が利用されています。
先軸には再生PP樹脂、後軸には再生ABS樹脂が利用されています。
PP、ABSはどちらもプラスチック樹脂の種類です。
また素材の話になりますが、もちろん興味のない方は読み飛ばしてください(笑)
PP(ポリプロピレン)とは

PP(ポリプロピレン)は、プロピレンモノマーからなる低密度、耐熱性、熱可塑性材料で一般的なプラスチックです
耐熱性と耐薬品性に優れ、バケツなどの安価なプラスチック製品、自動車部品、医療機器などに使用されています。
PP(ポリプロピレン) の特徴
- 耐薬品性に優れており、さまざまな酸、塩基、溶剤を保管するための配管や容器に使われる
- 絶縁特性を持っているため、電気・電子部品に使われる
- 耐水性に優れ、防水や液体に浸る部品に適している
- 高い強度と耐久性に優れており、負荷や力に耐えることができる
- 丈夫な素材でありながら軽量
- PP(ポリプロピレン)の短所
- 融点と引火点が低く、直火や高温にさらされると非常に燃えやすい
- 紫外線に長時間さらされると材料が劣化する
- 生分解性がなく、環境汚染の原因となる可能性がある
先軸にPP樹脂が使われることで、丈夫で軽量、薬品や水にも強くいろんな場面でもタフに使用することができますね。
ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)とは

ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)は、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの 3 つのモノマーで構成されています。
優れた耐衝撃性と靭性で知られており、また、比較的、熱や衝撃に強いことから幅広く使われています。
ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)の特徴
- ABS は製造コストが低いため、比較的安価
- 軽量でありかつ強度に優れ航空宇宙部品などにも使われている
- 絶縁特性があり、電子部品や電気ケーブルの絶縁に使われる
- ABSはその特性を失うことなく、何度も溶かして形を変えることができる
- ABS (アクリロニトリルブタジエンスチレン)の短所
- 融点が低く、高温を伴う用途には適さない
- 紫外線の影響を受けるため、長時間日光にさらされると、色あせ、脆化、機械的強度の低下を引き起こす
- 可燃性が高く、燃焼すると大量の煙が発生する
- 生分解性のない素材で、環境破壊を引き起こす可能性がある
後軸にABS樹脂は強度に優れているため、ノックという高頻度に負荷がかかる部品に適しています。
PP、ABSに共通する短所として「生分解性がない」という点です。
どちらもリサイクルに使用されないと、環境破壊を引き起こす可能性があり、しっかりと回収し、リサイクルする必要があります。
これらの素材について、特にPPには課題があり、ABSはリサイクルしやすい樹脂ですが、PPは再生する際に異種プラスチックとの分別が難しく、リサイクル過程で物性劣化しやすいそうです。
そのため高度な選別技術の開発、リサイクルしやすい製品設計などが求められています。
三菱鉛筆はこの再生PP、再生ABSを使用することが評価され、エコマーク認定、グリーン購入法適合、さらにエコ商品ねっとに掲載されています。
エコマーク認定を受けるためには商品のカテゴリーごとに細かな基準が設定され、さらに生産から廃棄までの全サイクルで環境への負荷が少ないなど総合的に判断されて認定されます。
ZENTO(ゼント)の「スタンダードモデル」はエコマーク認定を受け、環境省所管の「グリーン購入法」に適合した環境にやさしいボールペンということなんです。
ゼントの「スタンダードモデル」は環境保全のひとつとして社会に貢献しつつ、そして僕のような文具好きの購買意欲をそそる素晴らしいボールペンだなと思います。
カラーは全部で8種類

僕が購入したカラーは「コースタル」。
「コースタル」は「海岸」という意味で、海、砂浜、空といった自然な色彩をイメージしたカラーです。
青や白を基調とした柔らかい基調のカラーです。
その中でも濃く澄んだ空をイメージしたカラーかなと思います。
そのほか「クラウド」「ラベンダー」「アドビ」「シー」「カナリア」「アイボリー」「ミスト」と、全部で8種類。
ネーミングに凝っていて、一度聞いただけイメージしにくいのもありますが、ちょっとおしゃれですよね。
値段は税込定価275円
長々と素材について語ってしまいましたが、「スタンダードモデル」は税込定価275円と、素材の活用に手間がかなりかかっていますが安価に購入できます。
クリップは塗装されておらず、金属そのままの色なので、このあたりでコストカットを図っているのかなと思います。
大袈裟かもしれませんが、275円環境保全に寄与すると思えばかなり価値のある投資をしたって感じがしますよね。
環境に配慮された商品がこれからの「スタンダード」ということなんでしょうね。
ZENTO(ゼント)「ベーシックモデル」の特徴

「ベーシックモデル」はその名の通り基本的なモデルになります。
デザインは「スタンダードモデル」と同じで、グリップ部にはラバーが使われています。
滑りにくくとてもグリップがしやすいですね。
軸の色はインクカラーに合わせた3種類

ZENTOインクは黒、赤、青の3色があり、そのインクカラーに合わせ、軸も3種類あります。
淡いパステルカラーで柔らかい印象ですね。
「スタンダードモデル」のような凝ったネーミングはついておらず、軸のカラーは基本の3色に抑えられています。
ノック部分にもインクカラーに合わせたカラー表示があるのでひと目で何色のインクが入っているか分かりやすくなっていますね。
黒、赤、青それぞれ購入初期に装填しているボールサイズは0.38mmと0.5mmの2種類があります。
同じインクカラーだと軸の色も同じなので、購入する際は欲しいボールサイズかをしっかり確認してくださいね。
素材は「スタンダードモデル」と同じく再生材
使われている素材は「スタンダードモデル」と同じく再生PP樹脂、再生ABS樹脂です。
「ベーシックモデル」を買っても環境保全に寄与できますね。
値段は税込定価275円
値段も「スタンダードモデル」と同じく税込定価275円です。
凝ったネーミングでおしゃれなのは「スタンダードモデル」ですが、インクカラーが識別しやすく実用的なのは「ベーシックモデル」かなと思います。
三菱鉛筆ZENTO(ゼント)をおすすめする理由
ZENTOインクは新たな書き心地を体感できる
「シグニチャーモデル」は高級感がありマグネットキャップが楽しい
「フローモデル」は高級感がありノック式で利便性が高い
「スタンダードモデル」「ベーシックモデル」は環境保全に寄与できる
おすすめする理由を挙げるとキリがないですが、ZENTOインクのすごさはもちろんですが、4タイプのモデルそれぞれに特徴があり、それぞれに魅力的です。
今手に入れにくい軸もありますが、まずはこの書き味を体感するところから始めてはいかがでしょうか。
最後に

今回はZENTO(ゼント)のモデル4タイプを紹介しました。
この記事が皆さんの水性ボールペン(ローラーボール)選びの一助になれば幸いです。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
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