今回はカランダッシュの「849」ローラーボールをレビューします。
Caran d’Ache(カランダッシュ)の「849」シリーズは1969年に誕生したスイス製のロングセラー筆記具です。
「849」という名はもともと品番だったのが、そのまま呼び名として定着し商品名となったそうです。
鉛筆をモチーフにした六角形のボールペンは色とりどりのカラー展開、いろんなメーカーとのコラボ商品があり人気が高くご存じの方も多いかと思います。
2017年に万年筆が登場、2021年9月にローラーボールが登場しました。
六角形の形はそのままに、ボールペンより大きく太くなって使いやすくなっています。
それでは詳しく紹介します。
カランダッシュ「849」ローラーボールをおすすめする人
ノック式のローラーボールを使いたい
手ごろな価格のローラーボールを探している
カランダッシュの「849」が好き
カランダッシュ「849」ローラーボールの特徴
デザインは「849」ボールペンを継承

「849」ボールペンと並べてみました。
サイズは違いますがデザインはそっくりで、「849」ボールペンの特徴をそのまま継承している印象ですね。
まずはサイズを比較してみます。
全長は9.57mm長く2.77mm太い


「849」ボールペンは全長127.43mm、対して「849」ローラーボールは137.00mmでした。


また太さはボールペンが8.98mm、ローラーボールが11.75mmでした。
ローラーボールの方が全長が9.57mm長く、太さは2.77mm太くなっています。
重さは9.96g重くなっている


ボールペンが15.65g、ローラーボールは25.61gでした。
ローラーボールの方が9.96g重くなっていますね。
ボールペン、ローラーボールの軸に使われている素材はどちらもアルミニウムです。
長く、太くなったことでその分重くなったんですね。
より細部を見ていきましょう。
鉛筆のような六角形は「849」ボールペンと同じ

「849」の特徴のひとつとして、まず挙げられるのは鉛筆のような六角形をしているところですね。
カランダッシュはもともと鉛筆メーカーであったことから、ブランドの原点ともいえる形です。
六角形であることで鉛筆と同じ握り心地を再現しているんですね。
その他にも六角形にはいろんなメリットがあります。
六角形のメリット
まずは六角形にすることで平面が生まれ、転がってしまうのを防止したりするメリットがあります。
また六角形という形状は強度が高いという特徴があります。
六角形の方がねじり強度が高く、グリップしても軸がゆがみにくいそうです。
ボールペンの軸をアルミで形成する際、丸い棒を作るのとコストはほぼ同じだそうで、六角形であるメリットは多いですね。
六角形がなぜ持ちやすいのか

六角形をしていることでグリップしたときに指の支持面が広い為です。
指3本でペンを支えるようになるため、3の倍数にすると支持面が広くなり、グリップがしやすくなります。
六角形に限らず、三角形をしたグリップを採用した筆記具も結構見かけますよね。
三角形、六角形にすることで指の支持面を広くしてグリップをしやすくする為なんですね。
また角があることでわずかに指に引っかかりができて滑りにくいというメリットもあります。
ラバーグリップやローレット加工などの特別な加工をしなくても、六角形という形状のおかげで滑りにくいんですね。
あと人間工学の実験結果で指それぞれに均等に力をかけられるので、長時間使っていても疲れにくいそうです。
六角形ってすごいんですね。
カランダッシュの原点である鉛筆の六角形は伝統というだけでなく、これだけのメリットがあるのってすごいですよね。
もう少し深掘りできそうなのですがかなり長くなりそうですし、今回の記事とかなり逸脱してしまうので、また別の機会に記事にしてみたいと思います。
クリップ形状も「849」ボールペンの特徴と同じ

「849」のクリップは六角の軸にそってしっかりと固定され、直線的な形状をしています。
「849」ボールペンとローラーボールを並べてみました。
クリップ形状はボールペンと同じシンプルで機能性の高い形状になっていますね。


クリップはデザインだけでなくサイズもよく似ていて、ボールペンが43.54mm、ローラーボールが43.64mmでした。
本体の全長は約9.5mm違いますが、クリップはわずか0.1mmの差でほぼ同じサイズでした。
また、ボールペンと同じくクリップを脱着こともできますよ。
ノック式のローラーボール

カランダッシュの「849」ローラーボールはノック式です。
ノック音はかなり静かで、わずかに「シュカッ」という感じの音が聞こえる程度ですね。
「カチカチ」というノック音を想像してノックしたら相当静かなのでちょっと感動するレベルです。

音もそうですが、手ごたえも軽くていいですね。
ノック部分が大きいのでノックしやすいです。

ノックの金属部分に「CARAN D’ACHE」と刻印されているのがかっこいいですね。
軸にシンプルなロゴ


ちょうどクリップで隠れる部分に「849 CARAN D’ACHE」、さらに四角に囲まれた「SWISS MADE」の文字が書かれています。
その他にロゴはなく、全体的にとてもシンプルですね。
仮にロゴがなくてもこの形とクリップ形状でカランダッシュの「849」であることが分かる唯一無二のデザインが素晴らしいですよね。
定番カラーは5色

今回紹介するのは「マットブラック」。
光沢を抑えたマット塗装が落ち着いています。
またマット塗装にすることでグリップしてもすべりにくいです。
「マットブラック」の他、「マットホワイト」「マットブルー」「マットグレー」「マットレッド」と全部で5色です。

ボールペンは定番色だけでなく、毎年テーマが変わる限定色もあります。
加えてボールペンはファッションデザイナー「ポールスミス」とのコラボ、ポップアーティスト「キースへリング」の作品をモチーフにしたデザインもあり、比較にならないほど種類が豊富ですね。
軸のカラーやデザインのバリエーションはボールペンの圧勝ですね。
初期に充填されているリフィルはブラックで太さはF

購入時、初期に充填されているリフィル(替え芯)のインクカラーはブラックです。
ボールサイズは0.5mm(F)で、品番は「8468-009」です。
ボールサイズはもう一種類0.7mm(M)があり、品番は「8468-000」です。

インクカラーはブラックの他ブルーがあります。
ブルーもボールサイズは0.5mmと0.7mmの2種類あります。
品番はそれぞれ0.5mm(F)が「8462-160」、0.7mm(M)が「8462-000」となっています。
価格はカランダッシュの公式ページを見ると1815円!
アマゾンなどの通販サイトではもう少し安く買えるかと思いますが、けっこう高価ですね(汗)
リフィルはドライアップに注意

ローラーボールはキャップ式のものが多いです。
水性インクなのでリフィルがドライアップしやすいので、ペン先の乾燥を防ぐためにキャップをする必要があるからです。

ですが、「849」ローラーボールはノック式。
キャップがないのでペン先は常に空気に触れています。
キャップ式のローラーボールに比べるとドライアップしにくいようになっていますが、全く使わずに数か月放置すると確実にドライアップしてしまいます。
毎日使う人であれば全く問題ないですが、引き出しやペンケースに入れて放置してしまう人は注意してくださいね。
ドライアップを防ぐ延命方法

ひとつ目はペン先を下に向けてペン立てに立てる方法です。
ペン先側に常にインクがある状態にすることでドライアップを防げます。
ちなみに写真に写っているペン立ては、インク瓶の形をしたペン立てです。
よく立ち寄る文具屋さんでアウトレット価格で購入しました(笑)

ふたつ目はラップでペン先を覆う方法です。
要はリフィルのペン先が空気に触れる状況を避けるようにすればいいので、ラップでくるんでしまえば空気に触れなくなり、ドライアップしにくくなります。
ただ見た目がちょっと残念なんですけどね(笑)

ジップロックに入れて空気をしっかりと抜いておくという方法もあります。
普段あまり使わなくて保管する時は、メーカーやモデル別にジップロックに入れて保管しておけば整理にもなるのでおすすめですよ。
という感じでドライアップを防ぐ方法はいくつかありますが、すべて完全ではないです。
最強のドライアップを防ぐ方法はやはり毎日使うことでしょうね。
リフィルは「G2」規格

「849」ボールペンにはゴリアット芯というリフィルが使われています。
他メーカーのボールペンリフィルとの互換性はありません。
カランダッシュ独自の規格でローラーボールとの互換性はない…はずですが、実は使えます(笑)
ゴリアット芯と「G2」リフィルの互換性については、実際に検証しました。
検証結果については後述します。

対してローラーボールのリフィルは「G2」規格です。
「G2」規格のリフィルは非常に互換性が高く、多くのメーカーが製造、販売しています。
また「G2」規格のリフィルはインクのタンク部分が大きい為、筆記距離が長いという特徴があります。
「G2」規格のリフィルにはゲルインクだけでなく、油性インク、低粘度油性インクのものがあり、「849」ローラーボールに油性インクのリフィルを入れて使う事もできますよ。
「G2」規格のリフィルについてはこちらの記事で紹介しています。
よかったら参考にして下さい。
カランダッシュ「849」ローラーボールの使い心地
重心がかなり上にある

「849」ローラーボールは重心がかなり上にあります。
軸はアルミニウムで軽量化されていますが、クリップやノック部分が重いため、重心がかなり上にあるんだと思います。
ペンをある程度寝かせて手に沿うように持つ人であればそれほど気にならないかもしれませんが、立てて使う人にとってはかなり使いにくいんじゃないかなと思います。
ヌルヌルと気持ちよく書けるし発色がいい

インクフローはとてもいいですね。
F(細字)ですが、紙に引っかかるような感じはなく、ヌルヌルと書けますね。
発色も黒々としていて、書いた文字がはっきりとしていて見やすいです。
インクはにじみにくいが擦れやすい
カランダッシュのゲルインクは割と擦れやすいです。
いちおう速乾性ということになっていますが、乾燥にちょっと時間がかかります。
左利きの人だと文字が擦れたり、手が汚れたりするかもしれませんね。
擦れやすいですが、割とにじみにくく裏抜けもしにくいです。
ペリカンのローラーボールと速乾性を比べてみました。

カランダッシュ、ペリカンそれぞれ筆記後にティッシュでこすってみました。
上がペリカンで、下がカランダッシュですが、カランダッシュの方は見事に擦れてしまいました。
う~ん残念…
ペン先がカタカタする…

もうひとつ気になったのは、ペン先がちょっとカタつくんです。
いろんな口コミを見てみましたが、ペン先のカタつきについて言及したものは少しだけありましたね。
どうも個体差があるようで、ペン先がカタつくものがあるようです。
口金部分を見ると、リフィルとの間にわずかですが隙間が見えますね。
これがカタつく原因です。
購入時には試筆できる環境であれば、ちょっと試筆させてもらう方がいいかもしれないですね。
リフィルの交換方法

ノック部分をネジを回す要領で回していくと外れます。

ノック部分の機構が外れました。
ノック機構はこんな感じです。

ノック部分を外すとリフィルが出せます。
ペン先側にバネがありますが、バネは軸に固定されているようで出てきません。

新しいリフィルを軸に入れます。

ノック部分を押し込みながらネジを閉める要領で回します。
ネジが回らなくなる所まで回すとノック部が軸に固定され、リフィル交換は完了です。
他のリフィルをいくつか試してみた
「G2」規格のリフィルをいくつか試してみました。
三菱鉛筆 ジェットストリーム「SXR-200-05」

三菱鉛筆のジェットストリームインク搭載の金属製リフィルです。
軸内での固定は問題なく、ノックもちゃんとできますね。
ペン先の固定は純正リフィルと同じく、若干カタカタしました。

筆記に大きな影響はないですが、僕はちょっと気になりました。
個体差だったのなら、ちょっと残念ですね。
ジェットストリームインクは油性インクなのでゲルインクよりもドライアップしにくいというメリットがありますね。
「SXR-200-05」は税込定価660円。
カランダッシュの純正リフィルがかなり高価なので、その3分の1程度の価格で買えますね。
シュナイダー Gelion(ゲリオン)

シュナイダーのゲリオンは樹脂製のリフィルでゲルインクです。
樹脂製ですが、軸内での固定は特に問題はなく、中でカタカタしたりはしないですね。
ノックする際、リフィルが口金部分に引っ付くような感じがしますね。

ノックしたらペン先がヌル~ッと動く感じで、写真のようにしばらくペン先がにゅっと出てきたままになり、しばらくしたら通常位置に戻ります。
その口金にリフィルがくっついたような感じになるからかと思いますが、筆記時にペン先のグラつきが全くなく、純正リフィルよりも安定していました。

ゲリオンはゲルインクなので純正リフィルと同じくドライアップには注意が必要です。
ゲルインクで発色はいいですし、ペン先のカタつきはないし、なんといっても価格が363円とかなりお手頃なのが魅力ですね。
「849」ローラーボールのペン先がカタつくのを悩んでいる方にはシュナイダーのゲリオンはおすすめですよ。
その他いろんな「G2」規格のリフィルを試し書きしをしています。
こちらの記事で詳しく紹介しています。
多すぎて逆に悩んでしまうかもしれませんが、よかったら参考にしてください。
実はゴリアット芯が使える

いろんな「G2」リフィルを入れてた時に、「849」ボールペンに「G2」リフィルを入れてみて、ちょっと先がはみ出てくる程度で使えたのを思い出し、今度はローラーボールにゴリアット芯が使えるかを試してみました。

全長はゴリアット芯がちょっと短いし、形状もちょっと違うのでどうかなと思いましたが、軸に入れてノックしてみました。

普通にノックできました(笑)
ペン先の固定も純正と同じく若干カタつきがある程度で十分使用可能なレベルでした。
なぜ使えたのか、再度リフィルと軸を見てみます。
まずリフィルのペン先径を測定してみました。


ペン先径はゴリアット芯が2.47mm、「G2」リフィルが2.46mmでした。
0.01mmは測定の誤差範囲かと思うので、ペン先径は同じサイズと言っていいと思います。
同じサイズならペン先と口金との相性は特に問題がないということになりますね。
次いで全長を測定しました。


全長はゴリアット芯が95.89mm、「G2」リフィルが98.32mm。
「G2」リフィルの方が2.43mm長いですね。
ではなぜ使えたか。
次にノック部分の機構とリフィルとを合わせて見てみます。

「849」のノック部分の形状を見ると「G2」のへこみ部分にがっちりとかみ合うようになっています。
対してゴリアット芯は尾栓部分は平らになっていますね。
ゴリアット芯はノック部分の突起の先で平らな部分を押し出すようになります。
このノック部分の形状がゴリアット芯と「G2」リフィルとの全長の差を埋めていたんですね。
他の「G2」リフィルが使える軸にゴリアット芯が使えるのかはまだ検証していないのではっきりしたことは言えませんが、少なくとも「849」ローラーボールにゴリアット芯は使えますね。
カランダッシュ「849」ローラーボールをおすすめする理由
「849」ボールペンより大きく安定して持つことができる
六角形の軸でグリップが安定する
マット塗装でグリップが滑りにくく、長時間の使用でも疲れにくい
ゲルインクでヌルヌルと気持ちのいい書き味が楽しい
リフィルが「G2」規格なのでいろんなメーカーのリフィルが使える
実はゴリアット芯も使える
というところかと思います。
ただし、重心がかなり上なのでペンを立てて使う人にはちょっと使いにくかったり、純正リフィルは高価(1815円)であったりとちょっと残念なところもあります。
ローラーボールの価格は公式ページでは10450円とかなり高価です。
僕はかなり購入するか悩みましたけど、結局物欲に負けて買ってしまいました(笑)
高価でしたし、残念な部分もありましたけど、この唯一無二のデザインがカッコいいのですごく満足しています。
最後に
今回はカランダッシュの「849」ローラーボールを紹介しました。
この記事が皆さんのローラーボール選びの一助になれば幸いです。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
こちらは「849」のボールペン、それから「849」万年筆のレビュー記事です。
よかったらこちらも参考にしてください。






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