今回はゲルインクリフィルの規格「J」「K」「L」についてです。
これまでゲル「J」型、ゲル「K」型を「C300系リフィル」として紹介してきましたが、軸によっては互換性がある場合とない場合とがあります。
それぞれ規格が違うので使えない場合もあるのは当然なんですが、今回はより徹底的にリフィルの違いを比較して、改めて互換性を検証していきたいと思います。
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ゲルインクリフィルの規格について詳しく知りたい
ゲルインクリフィルの形とサイズについて
ゲルインクリフィルの分類

ゲルインクリフィルは形、サイズによって「J」「K」「L」「G2」「N」に分類されています。
| 全長 | 軸径 | ペン先径 | |
| ゲル「J」型 | 111mm(±1.0) | 5.5mm(±0.15) | 2.3mm(±0.05) |
| ゲル「K」型 | 111mm(±1.0) | 6.1mm(±0.15) | 2.3mm(±0.05) |
| ゲル「L」型 | 111mm(±1.0) | 6.0mm(±0.15) | 2.5mm(±0.05) |
| ゲル「G2」型 | 98.1mm (+0.40、-0.35) | 6.0mm (+0.1、-0.2) | 2.54mm (+0.03、-0.04) |
そしてこの「J」「K」「L」「G2」という規格から外れ、どれにも分類されない形、サイズのものは「N」に分類されます。
ゲルインクリフィルの規格はこの5種類に分類されていますが、今回注目するのは互換性の高い「C300系リフィル」と呼ばれる「J」型、「K」型、それに加え「L」型について詳しく見ていきたいと思います。
「G2」規格についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
よかったら参考にしてください。
ゲルインクリフィルは「全長」「軸径」「ペン先径」だけでなく細部まで規格がある

互換性を確認する上で、重要なのは「全長」「軸径」「ペン先径」です。
なので、これまで省略して紹介していましたが、実際にはさらに細部まで規格が決まっています。

「全長」「軸径」「ペン先径」だけでなく「a:ペン先から樹脂部分までの長さ」、「b:ペン先からタンク部分までの長さ」も規格されているんです。
それらを含めて表にしたのがこちら。
| 全長 | a | b | ペン先径 | 軸径 | |
| ゲル「J」型 | 111±1.0 | 7.7以上 | 21±1.5 | 2.3±0.05 | 5.5±0.15 |
| ゲル「K」型 | 111±1.0 | 7.7以上 | 20±1.5 | 2.3±0.05 | 6.1±0.15 |
| ゲル「L」型 | 111±1.0 | 8.9以上 | 20±1.5 | 2.5±0.05 | 6.0±0.15 |
となっています。
ゲル「L」型とゲル「J」・「K」型の互換性


ゲル「L」型に関しては、ゲル「J」型や「K」型と大きく違うのがペン先径です。
「J」「K」型が2.3mm(±0.05)に対し、「L」型は2.5mm(±0.05)と0.2mmの差があります。
このペン先径が違うことで、どんな影響があるのか実際に試してみたいと思います。
ゲル「L」型軸とゲル「J」・「K」型リフィル

ゲル「L」型軸、今回はパイロットのジュースの軸に「J」型、「K」型のリフィルを試してみます。
ゲル「J」型リフィル

ゲル「J」型リフィルはサクラクレパスの「R-GBN-05(ボールサインiD)」です。

入るには入りましたがノックができません。
軸との接合ネジを緩めることでノックすることができました。
上の写真のように軸と先軸のネジを1mmほど緩めたところでノックすることができました。

通常位置でノックできない理由はペン先の形状です。
写真の上がパイロットの「LP2R-8UF」、下がサクラクレパスの「R-GBN」です。
バネ受けなどの形状も違いますが、大きく影響したのはインクのタンク部分からペン先までの長さですね。

ノックできるところまで緩めた状態でもペン先が口金部分からかなり飛び出してきてしまっています。
この状態で筆記は可能ですが、ペン先と口金とのサイズ差が0.2mmある上にペン先が出過ぎているのでかなりカタつきます。
あまりおすすめできる組み合わせではなかったですね。
ゲル「K」型リフィル
ゼブラ「JF芯(サラサ)」

まずはゼブラの「JF芯(サラサ)」を試してみました。
リフィルは軸の中に納まり、ノックもできました。

ペン先はかなり違和感がありますね。
肉眼でも分かるほど口金との隙間が見えます。
筆記は可能ですが、ペン先のカタつきが気になります。
三菱鉛筆「UMR-82(ユニボールシグノ)」


次に三菱鉛筆の「UMR-82(ユニボールシグノ)」を試してみました。
こちらも「JF芯」と同様の結果となりましたね。
ぺんてる「LRN5(エナージェル)」


ぺんてるの「LRN5(エナージェル)」でも他の「K」型リフィルと同じですね。
軸内に納まり、ノックはできますがペン先は不安定な状態です。
どれを入れてもペン先のカタつきはある
ペン先径の違いがある為、ほぼ予想通りの結果となってしまいました。
パイロットのジュースには「J」型は不具合があり使えない、また「K」型はどのメーカーのリフィルを入れてもペン先の固定が不十分なので筆記時にカタついてしまいます。
軸によっては0.2mmの差があっても安定して使えるものもありますが、パイロットのジュースとゲル「J」型、「K」型とではあまり相性は良くなかったですね。
ゲル「J」・「K」型軸とゲル「L」型リフィル
それでは逆にゲル「J」・「K」型軸に「L」型リフィルを入れてみます。


まずサクラクレパス「サインボールiDプラス」にパイロットの「LP2R-8UF」を入れようとしました。
口金からリフィルがちょこっと出てきますがこれ以上出てきません。






ゼブラのサラサ、ぺんてるのエナージェル、三菱鉛筆のユニボールシグノとも試してみましたが、どれも口金からペン先が出てこなかったです。
無加工ではリフィルが軸内の収まらず、ペン先も出てこないので使えません。
どうしてもパイロットの「LP2RF-8UF」が使いたい場合は口金を広げるなどの加工が必要です。
またペン先にあるバネも調節する必要があるかもしれません。
規格上、0.2mmの違いがあるので予想通りではありますが、何かの間違いが起こらないかと期待してみましたが、そんなことは起きなかったですね(笑)
このペン先径の違いについては「C300系リフィル」を解説した記事でも触れています。
「C300系リフィル」についての記事はこちらになります。
よかったら参考にしてください。
ゲル「J」型とゲル「K」型の互換性
先に検証した通り、「J」「K」型と「L」型はペン先径が大きく違うので互換はありません。
使用可能な組み合わせもありますが、ペン先がカタつくなどの不具合が出てしまいます。
では「J」型と「K」型ではどれくらい違うのか。
再度規格を見比べてみましょう。
| 全長 | a | b | ペン先径 | 軸径 | |
| ゲル「J」型 | 111±1.0 | 7.7以上 | 21±1.5 | 2.3±0.05 | 5.5±0.15 |
| ゲル「K」型 | 111±1.0 | 7.7以上 | 20±1.5 | 2.3±0.05 | 6.1±0.15 |
規格で比べてみると、「全長」、「a」、「ペン先径」が同じで、違いは「b」と「軸径」ですね。
では実際のリフィルのサイズはどうなのか、「J」型、「K」型リフィルをそれぞれノギスで測定してみました。
「J」型・「K」型リフィル測定結果
ゲル「J」型はサクラクレパスの「R-GBN-05(ボールサインiD)」、ゲル「K」型はゼブラの「JF芯(サラサ)」を測定しました。
注目したいのは「a:ペン先から樹脂部分までの長さ」、「b:ペン先からタンク部分までの長さ」です。


サクラクレパスの「R-GBN-05」は「a」が7.84mm、「b」が13.04mm。


ゼブラの「JF芯」は「a」が8.13mm、「b」が20.07mmでした。
すべての測定結果を一覧にしてまとめてみました。
| 全長 | a | b | ペン先径 | 軸径 | |
| ゲル「J」型 | 111 | 7.84 | 21.03 | 2.3 | 5.5 |
| ゲル「K」型 | 111 | 8.13 | 20.07 | 2.3 | 6.1 |
全長やペン先径は大きな差はないですね。
また、軸径については「J」型が「K」型に比べ若干細い程度です。
まず気になるのは「a」の値。
規格では「J」型「K」型どちらも「7.7以上」となっていました。
実際に測定してみると「J」型が「7.84mm」に対して、「K」型が「8.13mm」と長いことが分かりました。
「b」は「J」型が「21.03mm」、「K」型が「20.07mm」とほぼ規格通りの数値です。
次に気になるのは「b」から「a」を引いた長さ、ペン先の樹脂部分の長さです。
計算すると「J」型では「13.19mm」、「K」型では「11.94mm」。
つまりペン先の樹脂部分は「J」型では「a」が「K」型より短いが樹脂部分は長いという事になります。
口金の精度向上により互換性に影響
ペン先辺りの違いについて詳しく見てきましたが、これが互換性にどんな影響があるのかというところですが、使用する軸によって大きく変わります。
これまでいろんな軸に「J」型、「K」型リフィルを試してきました。
検証についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
よかったら参考にしてください。
この記事の中から「J」型、「K」型どちらも使用できた軸、「J」型「K」型どちらかしか使用できなかった軸、それぞれまとめてみました。
「J」型、「K」型どちらも使用できた軸
- ゼブラ「サラサグランド(リニューアル前モデル)」
- 無印「ノック式 木軸」
- ぺんてる「エナージェルフィログラフィー」
- OHTO「CR01」「CR02」
- シャーピー「S・GEL」COPPER
- セーラー万年筆「TUZU」
- コクヨ「WPローラーボール」
- 三菱鉛筆「ZENTO フローモデル」
これらは軸内でのリフィル固定、口金との相性は特に問題なく使用できました。
「J」型「K」型どちらしか使用できなかった軸
- ゼブラ「サラサグランド(リニューアルモデル)」
- 無印良品「ノック式アルミ」
- 三菱鉛筆「ZENTO シグニチャーモデル」
この3本はどちらかが使えないというか、「J」型が使えなかった、または使えるがリフィルの固定が不安定だった軸になります。
この3本、純正リフィルはゲル「K」型、またはゲル「K」型の規格に準拠する水性リフィルとなっていますね。
なぜ「J」型リフィルとの互換性がないのか。
それには口金の内部構造が複雑になってきているということが大きく影響しています。
スタビライザー機構の登場でリフィルと軸との一体感が生まれた
これまで口金の構造はリフィルのペン先を通す穴が開いているだけのものが多かったかと思います。
そのため、リフィルのペン先形状に関わらず、ペン先径が合えば使用できた例が多かったと思います。
そうした中、2018年にゼブラの「ブレン」が登場。


「ブレン」には「エマルジョンスタビライザー」という機構が搭載されています。
これはペン先に金属を備えることで低重心化を図るとともに、リフィルとの隙間をなくしてペン先のカタつきを抑えるという機能があります。

さらに2021年に三菱鉛筆の「ユニボールワンF」が登場。
「ユニボールワンF」には低重心化、リフィルの安定化を図るため「スタビライザー機構」という仕組みが搭載されました。
これらのモデルが登場して以降「スタビライザー」という言葉が定着し、安価なモデルでも低重心化、リフィルのカタつき防止機構が搭載されたモデルが多く出回ることとなりました。


2021年に登場したサクラクレパスの「ボールサインiDプラス」や、2024年にゼブラの「ブレン」がさらに進化した「ブレンユー」が登場しています。
これらは口金部分に金属を使用して低重心化とリフィルの安定性を向上させ、高級筆記具さながらの筆記感を実現させています。
筆記の安定性を目的とした「スタビライザー機構」はリフィルを安定させるためにかなり精密に作られています。
先に測定した結果の通り、リフィルのペン先辺りにはわずかな構造の違いやサイズ差があります。
「J」型、「K」型それぞれのリフィルに合わせて精密に作られたスタビライザーなので、別規格のリフィルを入れようとしても、そのわずかな差によってペン先が十分に出てこない、ノックが出来ないといった不具合が生じるようになってきたんでしょうね。
互換性検証のまとめ
ゲル「J」・「K」型とゲル「L」型ではペン先径の違いから、使用できる組み合わせはあるが互換性があるとは言い難い
ゲル「J」型とゲル「K」型は互換性がある例が多いが、組み合わせによっては互換性がない
スタビライザー機構によりリフィルとの一体感は増したが違う規格のリフィルは使えないことが増えた
使用する軸のスタビライザー機構が「J」型「K」型の互換性に大きく影響します。
これまでの検証結果では圧倒的に「J」型「K」型どちらも使用できる軸が多いですが、「スタビライザー機構」の登場以降、ペン先構造がだんだんと精密に作られるようになってきています。
そういったボールペンが増えてくると「C300系リフィル」といろんな軸との組み合わせを楽しむのが出来なくなってくるのかもしれませんね。
内部構造がどうなっているのか、互換性があるのかは実際に試してみないとわからないことが多いです。
ですので、互換性の検証については今後もいろいろと試していきたいと思っています。
最期に

今回はゲルインクリフィル「J」「K」「L」型に注目してみました。
この記事が皆さんのボールペン選びやリフィル選びの一助になれば幸いです。
最後まで読んでくれてありがとうございました。





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