今年2月から始めた染料インクの耐光実験が半年を経過しました。
太陽の光を当ててどのように変化していったのか、その結果について報告します。
検証した染料インクは全部で42種類です。
さすがに多くて一度にまとめきれないので、前編と後編の2回に分けて報告します。
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染料インクが太陽の光を浴びることでどのように変化していくのか知りたい
どの染料インクが耐光性が高いのか知りたい
今回染料インクに焦点を当てて検証した理由
前回の検証結果報告で太陽光を当てた際、変化が3通りありました。
ひとつは「ほぼ退色して元の色がわからなくなり、筆記線も分からなくなったもの」。


もうひとつは「退色して元の色は分からなくなったが、筆記線が確認できるもの」。


そして「多少退色したが色が識別でき、筆記線が確認できるもの」。


おおきくこの3通りでした。
「顔料インク」はどれも色が識別でき、筆記線が確認できました。
また「古典インク」はどれもが色の識別はできなくなっていましたが、筆記線が確認できました。
ただ、「染料インク」に関しては色が識別できるものから、退色して筆記線が確認できなくなってしまったものまで結果は様々でした。
そのため今回「染料インク」に絞り、実際にどのように変化していくのかを検証しました。
選んだインクは僕が持ってる染料インクで前回の検証で使用しなかった42種類です。
僕の好みがかなり反映されたラインナップなので「なんでこのインクなの?」と思われるかもしれませんが、個人的な検証になるのでご了承ください。
実験方法
使用する紙はツバメノートの「インクコレクションカード」です。
前回の検証でも素晴らしい耐久性であったツバメノートの「インクコレクションカード」を今回も使用しました。
耐久性も素晴らしいうえに、A3サイズの額ひとつに縦7枚×横3枚の計21枚のカードが並べられるサイズ感も「インクコレクションカード」を選んだ理由です。

雨や湿気の影響をできるだけ避けるため、額は透明のビニールで包みました。
あとはベランダに並べて太陽の光を当てて、定期的にその変化を撮影しました。
染料インク耐光検証半年後の結果
準備した額はふたつありますが、今回はこちらのインク21種類の結果報告です。

検証開始時、3か月経過時、6か月経過時に撮影しました。
染料インクの耐光検証半年後の結果
パイロット
色彩雫 「竹炭」
「竹炭」の検証開始0日目の状態がこちらです。
ややグレーっぽい黒で、ちょっとフラッシュしているのも観察できますね。

左が検証3か月後の状態、右が6か月後の状態です。


筆記線などはしっかりと残っていますが、かなり退色していますね。
色だけ見ると、元が「竹炭」だったと判別するのは難しそうです。
色彩雫「冬将軍」
続いて「冬将軍」です。
いい感じの濃淡ができるので、使っていて楽しいインクですよね。

3か月後を見ると、けっこう退色してしまったかなという印象ですが、6か月後でも退色しているものの十分筆記線が確認できますね。


色もややくすんでしまってはいますが、グレーっぽい感じは残っていますね。
ちょっと判定が悩むところですが、色の印象は同じなので、退色せず維持できたということにしたいと思います。
色彩雫「霧雨」
「冬将軍」より濃いめのグレーで、こちらも濃淡が楽しめますね。

3か月後は退色はしているものの、筆記線はしっかりしていてインクカラーも判別できますね。
6か月後もさらに退色はしていますが、筆記線が確認でき、インクカラーは判別できますね。


色彩雫「月夜」
続いて「月夜」です。

3か月後は色の深みが薄れ、トーンがあがった印象ですね。
6か月後のもう一段トーンが明るくなった感じです。


「月夜」は筆記線は十分確認でき、インクカラーも保たれているといっていいと思います。
色彩雫「紫陽花」

3か月後は「紫陽花」の明るい印象が薄れ、ややくすんだ感じになってますね。
6か月後になると退色が進み、よりくすんだ印象です。


「紫陽花」はある程度色の変化はありましたが青系のインクであることは判別できますし、筆記線は十分確認できますね。
色彩雫「朝顔」

3か月後はやや明るみが減ったかなという印象ですが、6か月後でもその印象はほぼ同じで、大きな変化はないですね。


「朝顔」はインクカラーの印象はあまり変わらず、筆記線もしっかりと確認できますね。
色彩雫「天色」

こちらも「朝顔」のように3か月後に若干退色した感じはあるものの、6か月後も印象は大きく変わらず維持されていますね。


「天色」はインクカラーの判別はしっかりできますし、筆記線も十分確認できますね。
色彩雫「紺碧」

若干退色したかなという程度で、3か月後、6か月後とも撮影ミスかと思うほど変化がないですね。
改めて写真を確認しましたがミスではなく、実際の結果でした(汗)


「紺碧」は筆記線が確認でき、インクカラーもしっかりと保持されています。
色彩雫「孔雀」

「孔雀」も「紺碧」と同じように、検証開始時の状態から若干退色したかなという印象はあるものの、3か月後、6か月後と経過した状態はほぼ同じですね。


「孔雀」はインクカラーの印象はほぼ変化なく、当然筆記線もしっかりと確認できます。
前回行った検証でセーラー万年筆の「夜長」もそうでしたが、染料インクでも耐光性のある染料を使っているんでしょうね。
色彩雫「六花」

3か月後では、より明るくなった印象ですね。
6か月後は大きく変わらないですが、インクの濃度(厚み?)が薄い部分では退色が進んでいるかなという感じですね。


「六花」は筆記線が確認でき、インクカラーもほぼ維持できていますね。
色彩雫「松露」

3か月後、6か月後と徐々に退色しているのが分かりますね。
深みのあった色が、だんだんと白っぽく変化しています。


「松露」は徐々に退色してはいますが、筆記線は十分に確認でき、インクカラーも大きな変化はありませんね。
色彩雫「翠玉」

3か月後では、若干「翠玉」の緑っぽい印象は残っていますが、6か月後になると青みが強くなっていますね。
使用されている染料によって、耐光性に違いがあるのでインクカラーの印象が変わっているのかと思います。


「翠玉」はインクカラーは変化はあるものの、ある程度維持されているかと思います。
今後どう変化していくのかが面白そうですね。
セーラー万年筆
四季織「霜夜」

3か月後では退色は徐々に進んでいますが、ちょっとフラッシュしている状態が維持されていますね。
6か月後になるとフラッシュは確認できず、全体的に退色が進んできています。


「霜夜」は徐々に退色はしてきていますが、筆記線は十分確認できますし、インクカラーの印象も維持されていますね。
ゆらめくインク 「凍空」

3か月後で筆記線がギリ確認できるかなというレベルで、6か月後になるとほぼ退色してしまっていますね。


「凍空」は検証6か月でほぼ退色してしまい、筆記線も確認できなくなりました。
参考までに、検証1か月後、2か月後でどのような変化があったのかを見てみます。
左が1か月後、右が2か月後です。
1か月後の時点でかなり退色していて、「凍空」に含まれている赤っぽい感じの印象は全くなくなっていますね。
2か月後はさらに退色が進んでこの時点でもかなり筆記線が見えなくなってきていますね。


四季織「山鳥」

3か月後、6か月後と徐々に退色して、白っぽく変化してはいますが印象としてはそれほど大きな変化はないようですね。


「山鳥」筆記線は十分確認でき、インクカラーも維持されていると言っていいと思います。
寺西化学工業
スパークルインク「ミッドナイトネイビー」

3か月後の時点で青みがほぼなくなり、グレーっぽい色に変化してしまっていますね。
6か月後ではさらに変化し、よりグレーっぽい色になっています。
インクに含まれているラメが、退色が進むほどキラキラと輝くようになるのが面白いですね。


「ミッドナイトネイビー」は筆記線は十分確認できますが、インクカラーは維持できなかったということになりますね。
富士山いろどり「燦」

3か月後はインクの厚みがあまりない部分は退色が進んでいます。
また青っぽさが減り、徐々にグレーっぽい色になってきていますね。
6か月後になると青みはほぼなくなり、グレーっぽい印象になってきています。


「燦」は筆記線は確認できますが、インクカラーは維持できず退色してしまいました。
ハイカラインキ「メランコリックブルー」

3か月後はまだ青系統の印象は残っていますが、明るさがなくなり黒っぽい印象に変わってしまっていますね。
6か月後になるとさらに青系統の色が失われ、濃いグレーに変化してきています。
インクの厚みがない部分は退色して、筆記線が確認できなくなっている部分もありますね。


「メランコリックブルー」は退色して元のカラーは維持できませんでしたが、筆記線はまだ確認できますね。
シュナイダー
「アイスブルー」

3か月後、6か月後と徐々に退色はしている印象ですが、インクカラーはほぼ維持されていますね。


「アイスブルー」は検証6か月後でも筆記線、インクカラー共に維持できています。
ペリカン
「ロイヤルブルー」

3か月後、鮮やかだった青色が濃いデニムのような色に変化しています。
6か月後になると、青色の要素はなく黒~グレーに変化してしまっています。


「ロイヤルブルー」は筆記線は確認できますが、インクカラーは維持できなかったですね。
ラミー
「ブルーブラック」

この写真は左が1か月後、右が2か月後です。
1か月後の状態ですでに青い要素が失われ、濃いグレーに変化してしまっています。


時間を追うごとにさらに退色が進み、6か月後では元の色が何か分からなくなるほど変化してしまっていますね。


ラミーの「ブルーブラック」は検証6か月後の状態で筆記線はまだ確認できるものの、インクカラーは維持できていなかったという結果になりました。
染料インク耐光実験半年後のまとめ【前編】
前回の検証で疑問であった染料インクの耐光性について、以下の3通りに分類できました。
- 多少退色したが色が識別でき、筆記線が確認できるもの
- 退色して元の色は分からなくなったが、筆記線が確認できるもの
- ほぼ退色して元の色がわからなくなり、筆記線も分からなくなったもの
今回検証した21種類の6か月経過時の状態を上記の3通りに分類してまとめてみました。
| 退色しなかった | パイロット 色彩雫「冬将軍」 パイロット 色彩雫「霧雨」 パイロット 色彩雫「月夜」 パイロット 色彩雫「紫陽花」 パイロット 色彩雫「朝顔」 パイロット 色彩雫「天色」 パイロット 色彩雫「紺碧」 パイロット 色彩雫「孔雀」 パイロット 色彩雫「六花」 パイロット 色彩雫「松露」 パイロット 色彩雫「翠玉」 セーラー 四季織「霜夜」 セーラー 四季織「山鳥」 シュナイダー 「アイスブルー」 |
| 退色したが読める | パイロット 色彩雫「竹炭」 寺西化学 スパークルインク「ミッドナイトネイビー」 寺西化学 富士山いろどり「燦」 寺西化学 ハイカラインキ「メランコリックブルー」 ペリカン 「ロイヤルブルー」 ラミー 「ブルーブラック」 |
| 退色し読めない | セーラー ゆらめくインク「凍空」 |
今回の検証では筆記線が確認できるだけでなく、インクカラーをしっかりと維持できているインクが多かったことに驚きました。
染料インクは光に弱いといわれていますが、この検証を通して染料インクは耐光性があるものが多いのかなという気がしてきます。
耐光性もある染料インクの開発はメーカー努力もあるかと思いますし、すべての染料インクに耐光性が備わっているという訳でもないので一概には言えませんが、けっこうおもしろい結果になったと思います。

後編ではこちらの検証結果について報告します。
今回の報告とはまた違ってカラフルなインクを検証しているので、また違った傾向が見えてくるかもしれませんね。
最後に
染料インクの耐光性検証6か月後の結果報告でした。
この検証が皆さんのインク選びの一助になれば幸いです。
それではまた後編で。
最後まで読んでくれてありがとうございました。





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