今回は宝島社から出版されている「万年筆のある毎日 青を愉しむ万年筆インク6色セットつき」を紹介します。
インクボトルが6本ついており、それぞれニュアンスの異なった青系のインクが楽しめます。
インクの名前が秀逸で、ボッティチェリ、モネ、フェルメール、ゴッホ、葛飾北斎、横山大観と青が印象的な名画の作者から命名されているのが面白いです。
それでは詳しく紹介します。
この記事はこんな人におすすめ
どんな青のインクがセットになっているのか知りたい
「万年筆のある毎日 青を愉しむ万年筆インク6色セットつき」の特徴
書籍として販売されている
本なので文房具店ではなく書店で購入できます。
本は30ページあります。
内容については詳しくは省略しますがインク名の由来となる名画の紹介、インクの楽しみ方、万年筆の基本的な使い方の紹介などでした。
また、とじ込み付録としてインク色見本カードなどもあり、書籍としても楽しめますよ。
ボトルインクが6本セット
表題通り、ボトルインクが6本セットになっています。
ボトル1本の容量は約7mlで、かわいい小瓶に入っています。
本の付録というより、インクの付録として本がついているって感じもしますね。
これら6本のインクはすべて水性染料インクです。
万年筆などに使うインクは大きく分けると水性染料インク、顔料インク、古典インクの3種類に分けられます。
万年筆に使われるインクについてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
よかったら参考にしてください。
緩衝材に包まれしっかりと梱包されている
開封時に写真を撮り忘れていたので、梱包の状態を写真でお伝えできませんが、段ボールでしっかりと梱包され、ボトルは緩衝材に包まれていました。
しっかり梱包されていたのでボトルには異常なかったです。
付録が分厚いので本がゆがんでしまっていた
これだけの厚みのあるものが本に挟まっているので、本はゆがんでしまっていました。
インクを取り外してしばらく平らなところで何冊かの本で圧迫していたら、けっこうゆがみは補正されました。
本として販売するためには本に挟んでおかないといけないので、本がゆがんでしまうのは仕方がないんでしょうね。
ボトルインクを開封する際の注意点
外蓋を開けるとシリコンでできた中蓋がでてきます。
中が陰圧になっているようで、この中蓋を開けるときにインクが噴き出す場合があります。
周りにインクが飛び散ったり、手にインクがついてしまいます。
僕は1本目を開けるときにインクが噴き出してちょっと大変でした。
それで2本目からはティッシュをかぶせて、インクが噴き出しても周りにインクが飛び散ったり、手にインクがつかないようにしました。
中蓋を開けるときは気を付けてくださいね。
では6種類のインクをそれぞれ紹介します。
ボトルインクそれぞれの特徴
それぞれのインクについて、
- インクのイメージとなった絵画の簡単な解説
- pH測定した結果
- 3種類のインクカードを使ってどんな色なのか
を紹介します。
使用した「ツバメノート インクコレクションカード」「ヌルリフィル」についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
よかったら参考にしてください。
ボッティチェリ「ヴィーナスの誕生」
サンドロ・ボッティチェリは、ルネサンス期のイタリア生まれの画家です。
ボッティチェリの代表作はこのインクのイメージのもととなった「ヴィーナスの誕生」と、もうひとつ「プリマヴェーラ」です。
このインクは「ヴィーナスの誕生」に描かれている透明感のある青をイメージして作られたようです。
「ヴィーナスの誕生」のpH
「ヴィーナスの誕生」のpHを測定したところ「5.45」でした。
「5.45」は「弱酸性」ということですね。
「ヴィーナスの誕生」でインクカードを作る
ツバメノートのインクコレクションカード、ヌルリフィル、上質紙(黒)の3種類の紙でインクカードを作ってみました。
ツバメノート インクコレクションカード
淡くふわっとした感じの明るい青色ですね。
インクの濃淡が出やすいです。
ヌルリフィル
ツバメノートでは分かりませんでしたが、ヌルリフィルにインクをたっぷりのせた宝石部分を見ると、色素が分離しているように見えますね。
あまりたっぷりインクをのせすぎない方がよさそうです。
その他の文字部分などは透明感のある青できれいですね。
上質紙(黒)
黒い紙にインクをのせると、フラッシュする状態がよくわかるんですが、どこにインクをのせたかどうかも分からないほどですね。
「ヴィーナスの誕生」ではフラッシュ現象は確認できませんでした。
モネ「日傘をさす女」
モネは、印象派を代表するフランスの画家です。
代表作は「日傘をさす女」の他に「睡蓮」も有名ですね。
この「日傘をさす女」の空の青をイメージして作られたようです。
「日傘をさす女」のpH
「日傘をさす女」のpHは「5.64」でした。
これも「ヴィーナスの誕生」と同じく「弱酸性」ということですね。
「日傘をさす女」でインクカードを作る
ツバメノート インクコレクションカード
鮮やかな明るい、透き通った空の色を連想させる青色ですね。
ヌルリフィル
ヌルリフィルにインクをのせてみると、より明るい澄んだ空の色のようです。
上質紙(黒)
「ヴィーナスの誕生」に比べると、どこにインクをのせたのかは分かりますが、フラッシュはまったくしていませんね。
フェルメール「真珠の耳飾りの少女」
フェルメールはオランダの画家で、バロック期を代表する画家です。
写実的な手法で光の表現に長けていたため「光の魔術師」とも呼ばれています。
代表作には「真珠の耳飾りの少女」の他、「牛乳を注ぐ女」なども有名ですね。
フェルメールの作品でもっとも印象的なのは、「フェルメール・ブルー」と呼ばれる青です。
「真珠の耳飾りの少女」ではターバン部分に使われています。
「真珠の耳飾りの女」のpH
「真珠の耳飾りの少女」のpHは「4.50」でした。
「4.50」ということは「弱酸性」ということですね。
「真珠の耳飾りの少女」でインクカードを作る
ツバメノート インクコレクションカード
「真珠の耳飾りの少女」に描かれている少女のターバンよりはちょっと濃いかなって感じもしますね。
インクの濃淡がしっかり出ていて、くっきりとした青ですね。
ヌルリフィル
ヌルリフィルにのせると、若干青が柔らかくなった感じがしますね。
僕の持っている「青色」のイメージはこの青で、まさに「青」だなって感じです。
上質紙(黒)
このインクもフラッシュは観察できませんでした。
ゴッホ「夜のカフェテラス」
ゴッホはオランダの画家で近代美術の代表の一人です。
日本での知名度はかなり高く、自らの左耳を切り落とすなど、その生涯にも注目された画家ですね。
たくさんの名画を残していますが、代表作はなんといっても「ひまわり」ですね。
その他、「星月夜」のうねるような夜空も有名ですが、このインクのイメージとして用いられたのは「夜のカフェテラス」です。
明るく照らされたカフェテラスとたくさんの星が浮かぶ夜空を深みのある青で描かれているのが印象的ですね。
「夜のカフェテラス」のpH
「夜のカフェテラス」のpHは「2.67」でした。
「2.67」ということは「酸性」ということになりますね。
「夜のカフェテラス」でインクカードを作る
ツバメノート インクコレクションカード
暗く青い夜空ながら、その中に輝く星を感じられる青ですね。
ヌルリフィル
色の方向性としては「真珠の耳飾りの少女」と似てるかなって思いますが、「青」というよりは少し紫っぽい感じがします。
ちょっと写真ではそのちょっとした色の表現の違いがうまく伝わらないのがくやしいですね。
もっと写真の技術を勉強したいと思います。
上質紙(黒)
フラッシュは観察できませんね。
葛飾北斎「富獄三十六景 神奈川沖浪裏」
葛飾北斎(かつしかほくさい)は、江戸時代後期の浮世絵師です。
生涯に3万点を超える作品を発表されているとのことですが、驚きですよね。
葛飾北斎と聞けば多くの人がすぐに思い浮かべるであろう作品が『富嶽三十六景』です。
通称「赤富士」と呼ばれる「凱風快晴」はとても有名ですね。
また、このインクのイメージとなった「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」は、波の表現が評価され「Great Wave」の名称で世界的にも広く知られています。
「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」のpH
「富獄三十六景 神奈川沖浪裏」のpHは「4.74」でした。
「4.74」は「弱酸性」ですね。
「富獄三十六景 神奈川沖浪裏」でインクカードを作る
ツバメノート インクコレクションカード
写真では少し明るく写ってしまっていますが、もう少し濃い青色です。
青でもより濃い藍色のイメージですね。
北斎の力強い波のようにどっしりとした青色です。
ヌルリフィル
インクがたくさんのった部分はかなり濃い青色ですね。
濃いだけでなく、若干白波のような白い部分を感じさせてくれますね。
上質紙(黒)
若干光っているように写っていますが、金属のような光沢は観察できませんね。
文字はほとんど潰れて読めませんね。
横山大観「群青富士」
横山大観は茨城県出身の日本画家です。
富士山を画題として好んだようで、富士山を描いた作品は「心神」など2000点を超えるそうです。
インクのイメージとなった「群青富士」は広く広がる雲海に浮かぶ群青色の富士がとても印象的です。
「群青富士」のpH
「群青富士」のpHは「3.51」でした。
かなり「酸性」よりですが「弱酸性」ということになりますね。
「群青富士」でインクカードを作る
ツバメノート インクコレクションカード
まさに「群青」という言葉がぴったりする青ですね。
どっしりとした青色で、インクの濃度によっては黒にも見えそうです。
ヌルリフィル
深みのある青色は、まさしく横山大観の描いた雲母から除く富士山のようですね。
これはかなり作り手がイメージした通りの青色になったんじゃないかと思います。
上質紙(黒)
若干フラッシュしているような気もしますが、文字部分などはフラッシュしていないですね。
6種類のインクから見えた共通点
- 有名な絵画をイメージしたいろんな「青」が楽しめる
- pH測定の結果、どのインクも「弱酸性」~「酸性」
- フラッシュは観察できない
という感じですね。
一度にこれだけの「青」が楽しめるので、僕は買ってよかったと思っています。
この「青」達を使ってカリグラフィーを書いたり絵を描いたりしてみたいと思います。
注意点として、そのどれもが「弱酸性」~「酸性」なので、万年筆に入れっぱなしにしておくのはあまりおすすめできません。
特に鉄ペンに使う際はペン先が腐食してしまう可能性があるので気を付けてくださいね。
最後に
今回は「万年筆のある毎日 青を愉しむ万年筆インク6色セットつき」を紹介しました。
気になる「青」はありましたか?
いろんな「青」でいろんな楽しみ方ができそうですね。
インクカードを作って眺めるだけでも楽しいですよ。
同じシリーズで、「黒を愉しむ」「色を愉しむ」というものあって、面白そうだったので買ってみました。
また試してみてレビューしたいと思います。
皆さんのインク選びの一助になれば幸いです。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
インクのpHについてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
インクフラッシュについてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
よかったら参考にしてください。
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