水性インクと油性インク(とゲルインク)の違いや特徴などについて、こちらの記事で紹介しました。
万年筆用のインクは、全て水性インクになります。
着色料に違いがあり、この着色料によって「染料インク」、「顔料インク」、「古典インク(没食子インク)」に分けられます。
それぞれの特徴をざっくりまとめると
「染料インク」
- 発色がよく、種類が豊富
- 万年筆のメンテナンスがしやすい
- 水や光に弱い。
「顔料インク」
- 種類は染料インクに比べると少ない
- メンテナンスがすこし大変
- 水や光に強く、退色しにくい
「古典インク(没食子インク)」
- 種類はかなり限定される
- メンテナンスはけっこう大変
- 水や光に強く、退色しにくい
と、こんな感じになります。
今回は万年筆のインクに焦点を当てて、その特性、使用する時の注意点など詳しく紹介します。
この記事をおすすめする人
万年筆のインクについて詳しく知りたい
インクの取り扱いと注意点を知りたい
初心者におすすめのインクを知りたい
染料インクの特徴
発色が鮮やかで、種類が豊富
染料インクは色が鮮やかで種類が豊富なのが特徴です。
PILOT(パイロット)の「iroshizuku(色彩雫)」やSAILOR(セーラー)の「SHIKIORI(四季織)」が有名ですね。
メーカーによって、粘度や表面張力に違いがあって書き味は少しずつ違いますが、サラサラと書きやすいです。
また、紙の質にもよりますが、書きやすい分にじみや裏移りをする場合があります。
メンテナンスがしやすい
染料インクは水に溶ける性質があります。
メリットとしては、インクが乾いてしまっても、ある程度は水で流すことができるので、メンテナンスがしやすいということ。
デメリットとしては、濡れるとインクがにじみ出たり、流れてしまったりしてしまいます。
水に弱いというデメリットはありますが、メンテナンスがしやすいので初心者にはこの染料インクがおすすめです。
水や光に弱く退色してしまう
先に書きましたが、水に弱いので筆記した字などが流れてしまいます。
さらに湿気の多い場所や、光が当たる場所ではインクが退色してしまいます。
なので、染料インクは長期保存には向いていません。
長期保存が必要な書類や、長く残しておきたい記録などでは染料インクは使わないようにしましょう。
顔料インクの特徴
染料インクに比べると種類は少ない
万年筆用の顔料インクは染料インクに比べると種類は少ないです。
その中でも一番のおすすめはSAILOR(セーラー)の「STORIA(ストーリア)」。
顔料インクはいろんな色を作るのが大変ですが、このストーリアは8種類!
発色も良く書き心地もいいので、万年筆に慣れてきたら使って欲しいインクです。
また、このストーリアが進化して混ぜることができるタイプのものが出ました。
混ぜるとこができるという事は、組み合わせによっていろんな色が作れるということ。
顔料インクでいろんな色を生み出せるインクを作ったセーラーはほんとに凄いです!
また使ってみてレビューしてみたいと思います。
メンテナンスはちょっと大変
顔料インクというは、溶剤に着色剤が溶けずに混ざっている状態です。
筆記すると、溶剤が乾いて紙に着色剤が定着します。
定着した着色剤は水に流れにくいし、光にも強いという特徴があります。
この特徴が短所でもあり、万年筆に入ったまま乾いてしまうと水だけでは洗い流すことが出来なくなります。
個人で対応する場合は、プラチナ万年筆から万年筆専用インククリーナーが販売されています。
こちらである程度インク詰まりは解消されます。
完全に乾いてインクが出なくなった場合は専門店での修理が必要になります。
状態によっては必ず修理できるとも限らないので、普段からのお手入れや、使わない時は必ずインクを抜いて洗浄して乾燥させるといったメンテナンスを心がけましょう。
古典インクの特徴
没食子(「もっしょくし」または「ぼっしょくし」と読みます)インクとも言います。
種類は少ない
名前の通り、今の染料インクや顔料インクが生まれる前から筆記に使われていたインクです。
古典インクは書いた時と乾いたときで色が変わっていくのが特徴です。
これまではブルーブラックが一般的でした。
古典インクは水性染料インクに鉄分と酸性分を加えたインクです。
筆記直後は青く発色し、乾燥していくと酸化作用で紙の文字が黒くなります。
酸化して定着したインクは水や光に強く、長期保存に向いています。
この特徴を活かして、色が変化していく様子を楽しむ人のために開発されたのがPLATINUM(プラチナ)の「CLASSIC INK」( クラシックインク)です。
初心者には不向きなインクですが、ぜひ使ってみて、色の変化を楽しんでみてください。
メンテナンスは結構大変
この酸化作用が曲者です。
乾燥して定着してしまうと、水では洗い流せません。
さらに、金属も酸化させてしまうのでサビの原因にもなります。
ペン先などがサビてしまうと、筆記そのものが出来なくなってしまいます。
大切な万年筆に使う場合は、絶対に乾燥させてしまわないように、使わない時はすぐにインクを抜いて洗浄し、乾燥させて保管するようにしましょう。
いきなり高価な万年筆には入れずに、安価な万年筆に入れて使う方が無難かな。
おすすめのインク
初心者ならまずは染料インクを選ぼう
まず初心者におすすめするインクは染料インクです。
初心者は基本的に万年筆と同じメーカーのインクを選ぶのがいいと思います。
それはなぜかというと
インクはメーカーそれぞれに粘度や表面張力などに違いがあります。
メーカーはこの粘度や表面張力などを調整し、万年筆の特性を最大限生かせるようにインクを開発しています。
万年筆の特性を生かすため、同じメーカーのインクを使うことをおすすめしています。
記事で使用したペンとインクについて
ペンはセーラーのつけペン「hocoro(ホコロ)」
この「hocoro(ホコロ)」は万年筆のペン先になっています。
どういうことかというと、このペン先には「ペンポイント」があるんです。
この「ペンポイント」があるおかげで、摩耗に強く、さらに一定の字幅で安定して書きやすくなっているんです。
ちょっとインクを試し書きしたいっていう時なんかにはとっても便利ですよ。
「hocoro(ホコロ)」についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
よかったら参考にしてください。
染料インクはパイロットの色彩雫「momiji(紅葉)」
パイロットの色彩雫シリーズはやはり外せないですね。
とても鮮やかな赤です。
映える赤を探している人にはおすすめです。
顔料インクはセーラーのストーリア「「ファイアー(レッド)」
顔料インクなので、裏抜けしにくいですし、発色もきれいですね。
ちょっと明るめの赤で、朱色に近いかな?
古典インクはプラチナのクラシックインク「CASSIS BLACK(カシスブラック)」
古典インクは乾いていく様子をみるのも楽しいですね。
書き始めは明るめの赤ですが、乾くにつれて徐々に色が沈み込んで暗赤色に変化していきます。
この変化していく様子は古典インクならではの楽しみ方ですね。
このインクの濃淡が出やすいのも古典インクの特徴ですね。
まとめ
今回は万年筆のインクに焦点を当てて紹介してみました。
染料インク、顔料インク、古典インクそれぞれに特徴があって楽しいですよね。
今後は、それぞれのインクをレビューしていけたらと思います。
この記事が皆さんのインク探しの一助になれば幸いです。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
インクとpHの関係はご存じですか?
インクのpHについてこんな記事をかいてます。
よかったら参考にしてください。
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