【インクの基本】万年筆インクのpHの話

インクの基本
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インクのpHを気にしたことはありますか?

僕はインクのpHなんて関係ないよ!

とこれまでは全く勉強してきませんでした。

「強い酸性のインクは鉄ペンだとペン先が痛んでしまう」

とか

「インクを混ぜると固まってしまう」

程度の知識でした。

今回はこの「pH」に焦点をあててインクについて詳しく紹介したいと思います。

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そもそも「pH」ってなに?

酸性とアルカリ性インクの違いが知りたい

万年筆インクを混ぜるとなぜ固まるのか知りたい

そもそも「pH」ってなに?

「pH」は「ペーハー」もしくは「ピーエッチ」と読みます。

教科書的には「ピーエッチ」という読み方が正しいのかな?

で、この「pH」というのは「水素イオン濃度」の略称で、溶液中の水素イオンの濃度を指します。

リトマス試験紙

小学校の時にリトマス試験紙を使った実験をしたことがありますよね。

青色が赤色に変化したら酸性、赤色が青色に変化したらアルカリ性、どちらも変化しなければ中性と分かります。

(この記事を書くために調べましたが、こんなことあったな~程度しか覚えてませんでした)

アジサイの花の色と土壌のpHの関係なんかもよく知られている話ですね。

アジサイは酸性の土壌だと青い花になり、アルカリ性の土壌だとピンク色の花になるということです。

酸性・中性・アルカリ性

ちょっと脱線してしまいましたが、リトマス試験紙では、アルカリ性か、酸性か、中性かを調べるだけでした。

で、この「pH」というのは、その酸性、アルカリ性の程度を表す指標で

中性を7とし、7より小さいと酸性、7より大きいとアルカリ性となります。

さらに細かく分類するとこの表のようになります。

液体の性質酸性弱酸性中性弱アルカリ性アルカリ性
pHの範囲pH < 3.03.0 ≦ pH < 6.06.0 ≦ pH ≦ 8.08.0 < pH ≦ 11.011.0 < pH

もう一つややこしい話をしますが、水は「H2O」という化学式で表されます。

この「H2O」という状態であれば中性ですが、この中に「H2O」が分かれて、「H+」と「OH」となったイオンが混ざっています。

「H+」=「水素イオン」、「OH」=「水酸化物イオン」といいます。

「水素イオン」が多いほど酸性に傾き、

「水酸化物イオン」が多いほどアルカリ性に傾く、

ということになります。

酸性とアルカリ性インクの違いが知りたい

で、この「pH」とインクに何の関係があるんだ!

ということですが、

万年筆のインクは水に染料を混ぜて色を作り出しています。

染料を混ぜることで中性であった「H2O」が「H+」と「OH」イオンに分解されます。

そのため、混ぜた染料の種類によって、

染料と水酸化物イオンがくっついて、水素イオンが多くなれば酸性に傾きます。

また染料と水素イオンがくっついて、水酸化物イオンが増えればアルカリ性に傾きます。

染料によって酸性、アルカリ性となったインクはそれぞれ特徴があります。

酸性を示すインクの特徴

  • 使える染料の種類が限定されるため色が限定的
  • 微細な沈殿物が発生することがある(筆記性能には大きな影響はない)
  • ペン先を痛めてしまう可能性があるため、使う万年筆のペン先が耐食性のあるステンレスや金ペンに限られてしまう
  • インクが徐々に酸化してインク内の鉄分が定着し、耐水性、耐光性が増す(古典インクの特徴)

酸性を示すインクの多くは古典インクです。

古典インクの特徴である酸化作用が金属を腐食させ、ペン先を痛めてしまう原因です。

古典インクに限らず、酸性の強いインクは同じように酸化による腐食を起こす可能性があるので、鉄ペンでの使用には注意してください。

どうしても鉄ペンで使用する場合は、万年筆にインクを入れたまま長期間放置しないようにしてくださいね。

酸性インクの魅力

酸性インクはこうした特徴があり、使うのを躊躇してしまうかもしれません。

でも、酸性インクにしかない魅力もあります。

古典インクが時間の経過とともに変化していく様子は見ててとても楽しいし美しいです。

深みと奥行きのある青色は酸性インクに多い傾向にあります。

(青色全てが酸性というわけではありません)

プラチナ万年筆 ブルーブラック「富士」:pH=2.0

僕の好きなブルーブラック「プラチナ万年筆 富士」は酸性インクです。

とても魅力的なインクでおすすめです。

プラチナ万年筆 クラシックインク カシスブラック:pH=1.2 フォレストブラック:pH=1.3 

おなじくプラチナ万年筆の「クラシックインク」も酸性インクです。

この「クラシックインク」は古典インクでありながら「ブルーブラック」以外に6色も展開しているインクです。

6色とも時間の経過による色の移り変わりがとても魅力的なインクです。

万年筆のメンテナンスには少し手間はかかりますが、それ以上に魅力あるインクなのでぜひ使ってみてください。

アルカリ性を示すインクの特徴

  • 濃度が高く、鮮明な色が出る
  • 耐水性や耐光性が酸性インクに比べると低い
  • アルカリ域で使える防カビ剤が限られるので防腐対策が難しい

アルカリ性インクの魅力

酸性インクに比べ、扱いが簡単なので初心者にも使いやすいインクです。

特徴にあるように、発色が鮮やかなので、インクの種類が豊富です。

特に日本のメーカーのインクのほとんどは中性~アルカリ性です。

染料インク、顔料インクのどちらもこの中性~アルカリ性なので、酸化によるペン先のダメージは気にしなくても大丈夫です。

顔料インクは固まってしまうと、水で流せないので、その点は注意する必要がありますが…

冬将軍:pH=10.2 紫式部:pH=9.6 孔雀:pH=9.1 山葡萄:pH=10.0

僕の好きな色彩雫シリーズはどれも中性~アルカリ性。

セーラー 四季織 夜桜:pH=9.7

そしてもうひとつ、僕の好きなセーラー万年筆の四季織シリーズも同じく中性~アルカリ性です。

海外ブランドのインク

パーカー ブルーブラック:pH=7.5 モンブラン ミッドナイトブルー:pH=4.2 ペリカン ブラウン:pH=5.2

日本のブランドに対して、海外のインクは酸性を示すインクが結構あります。

ペリカンやモンブランのインクは酸性を示すインクが多く、特にブルー系統はより酸性を示すことが多いです。

インクを買ったときにこの「pH」は記載されていないので、酸性なのか、アルカリ性なのか分かりません。

ですが「海外ブランドのインクを避けるべき」ということを言いたいのではなく、

むしろ海外ブランドのインクは魅力的な色がたくさんあるのでぜひ使ってほしいと思っています。

「すべてではないけど、海外ブランドのインクには酸性のインクが多い傾向がある」

ということを知ったうえで、きちんと万年筆のお手入れをして長く楽しんでもらえたらと思います。

インクの劣化

インクに使用期限が設定されているのはご存じかと思います。

ではなぜ使用期限が設定されているのか。

それは、インクの水分が蒸発して濃度が高くなったり酸化したりするからです。

これによって色が変化してしまったり、異臭やカビが発生することもあります。

もし使えたとしても、今回の焦点である「pH」も変化しています。

つまり酸化しているということは、

アルカリ性で作られたインクが徐々に酸性に傾いてきてしまう

ということです。

酸性に傾くことによって、先に話したようにペン先を痛めてしまう可能性が大きくなります。

なので、インクは開封後はインクを長持ちさせるために

  • きちんとキャップをする
  • 直射日光や高温多湿をさけて冷暗所で保管する

ということです。

インクの使用目安は2~3年程度といわれています。

もったいないからといって無理に使うと、大切な万年筆を痛めてしまうかもしれません。

インクが痛んでしまったら、無理に使おうとせずに破棄するようにしてくださいね。

万年筆インクを混ぜるとなぜ固まるのか知りたい

万年筆のインクを変えるとき、しっかり洗浄する。

これは万年筆を使っている人は当然やっていることですよね。

ではなぜしっかり洗浄する必要があるのか。

パターンとして2種類あり、

  • 酸性インクとアルカリ性インクを混ぜることで固まる成分が生成されてしまう
  • 染料インクと顔料インクを混ぜることで組成が崩れて顔料が沈殿してしまう

ということです。

酸性インクとアルカリ性インク

酸性インクの鉄分

酸性インク(古典インク)には鉄分が含まれています。

アルカリ性インクと混ぜることで、酸性が中和され、中性~アルカリ性になります。

これにより、もともと酸性によって溶けていた鉄分が固まってしまうということです。

鉄分が万年筆の中で固まってしまうとインクが出てこなくてなってしまいます。

鉄分は水で洗い流せないので、もうその万年筆は使えなくなってしまいます。

アルカリ性インクの染料

アルカリ性インクの染料に酸性が加わることで、染料が分解され固形物が生成されてしまいます。

これによりインクが詰まってしまい、先ほどの鉄分と同様、水では流せないので、万年筆が使えなくなってしまいます。

染料インクと顔料インクを混ぜる

このパターンは今回の「pH」とは直接関連はありませんが、不具合が起こる混合なので説明しておきます。

顔料インクというのは、水には溶けない性質を持っています。

なので、筆記後乾燥すると耐水性、耐光性があります。

ただ、この性質のため、そのまま水に混ぜただけでは顔料は水より重いので沈殿してしまいます。

そのため、この沈殿を防ぐためにいろんな添加物を使用して顔料を浮遊させています。

ここに染料インクが混ざると、この組成バランスが崩れてしまい顔料が沈殿してしまいます。

沈殿した顔料は固まると、その性質上、耐水性があるので水では洗い流せなくなってしまいます。

万年筆の中で沈殿して固まると、インクが出なくなるなどの不具合を起こしてしまいます。

混ぜても大丈夫なインク

「自分だけのインクを作りたい」

インクが好きな人は、どの組み合わせなら混ぜても大丈夫か試行錯誤しながら、「自分流」を作り出してきました。

ですが、インクは混ぜてはいけない、混ぜたインクでの不具合はメーカー保証外、というリスクを負っています。

この思いをリスクなく叶えるべく、最初から混ぜて作るのを前提に作られたインクがあるので紹介します。

プラチナのミクサブルインク

プラチナのミクサブルインクは染料インクです。

原色である3色に加え、色をイメージしやすいように中間色を加えられていて、

種類は全部で9種類。

うすめ液で明るさや淡さを調整できます。

自分がイメージする自分だけのインクを作り出せます。

イメージ通りの色が完成したら空の瓶にいれて、それを眺めてニヤニヤしましょう。

セーラーのストーリアミックス

セーラーのストーリアは顔料インクです。

この顔料インクを混ぜて、自分好みの顔料インクが作れます。

これは画期的ですね。

ただでさえいろんな色を作るのが難しい顔料インクが、組み合わせによって無限ともいえる色を作り出せるということです。

専用のうすめ液を使って、淡くしたり明るくしたりもできます。

最後に

今回はインクの「pH」に焦点をあてて紹介しました。

ちょっと難しい話でしたが、僕はすごく勉強になりました。

インクのことをもっと知って、インクがもっと好きになりました。

この記事が皆さんのインク選びの一助になれば幸いです。

最後まで読んでくれてありがとうございました。

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