インクのレビューを見ると時々「レッドフラッシュ」という言葉を目にします。
「フラッシュ」という現象は、書いた線の縁(ふち)やインクが濃く溜まった部分に光が当たると、インクの色とは違った金属のような光沢のある色が見える現象の事を指します。
「フラッシュ」は狙った色と違う色が見えるので好きか嫌いか分かれるようですが、最近ではこのフラッシュが起こるインクが好きな人も増えてきました。
僕もこの「フラッシュ」について興味があって調べてみました。
調べようとした矢先、INOUE Tomohiroさんのnoteに出会いました。
ものすごく詳しく、かつとても興味深い論文を発表されていました。
僕にはかなり高度な内容で難しかったですが、興味のある方はぜひこちらの記事をご覧ください。
で、僕なりに理解できた範囲で記事にして、実際にいろんなインクでフラッシュが観察できるか試してみました。
この記事をおすすめする人
インクのフラッシュってなに?
インクフラッシュってなぜ起きるの?
フラッシュしやすい条件ってなに?
フラッシュってなに?
「フラッシュ」はインクの色とは違った金属のような光沢のある色が見える現象
インクのフラッシュとはどういう現象なのか。
参照したnoteにはこう述べられていました。
「フラッシュ」という現象は、書いた線の縁(ふち)やインクが濃く溜まった部分に光が当たると、インクの色とは違った金属のような光沢のある色が見える現象の事を指します。
インクのフラッシュ(Sheen)の原理を考える INOUE Tomohiro より引用
日本では「フラッシュ」という呼び名が一般的ですが、世界視野ではSheen(シーン)という表現が一般的なのだそうです。
この「フラッシュ」という現象は、本来欲しい色とは別に思いがけない色が出てくるので、フラッシュするインクは敬遠されがちでした。
近年この「フラッシュ」するインクに興味のある人が増えてきているようです。
また、この「フラッシュ」を狙って作ったインクまで登場しています。
フラッシュってなぜ起きるの?
「フラッシュ」は色素成分の選択反射によるもの
フラッシュってなぜおきるのかというところですが、
色素の吸収ピーク波長近傍で屈折率が変化し、反射率が増加することによる「選択反射」によるものである
インクのフラッシュ(Sheen)の原理を考える INOUE Tomohiro より引用
→言い換えると「特定の色を強く吸収する性質を持った色素は、その色と相互作用する力が大きいため、反射光も強くなり、結果、補色っぽい色を強く反射する」
→更に短く表現すると「フラッシュとは色素の異常分散による選択反射」であ
これは色素に固有の現象である。分子構造できまるのでフラッシュを生じる色素は最初から決まっていることになる。
と、フラッシュの起こる原理についてはこう述べられていました。
インクに使われている特定の色素成分が強く反射して金属のような光沢をもつ色が見えるということのようです。
また、「フラッシュ」はインクの色素が分離しているわけではないということだそうです。
つまり「レッドフラッシュを生じるインク製品の中には赤い色素が含まれていて、それが分離して赤く見える」という訳ではないということのようですね。
その他に、インクの色素が化学変化したことでおきる現象でもないとも述べられています。
「フラッシュ」しやすい条件
「フラッシュ」の発生条件については以下のようにまとめられていました。
「フラッシュ」の発生条件
このような条件下であれば「フラッシュ」が確認されるようです。
- インク吸収の弱い(インクがしみこみにくい)材質に書いたとき(特にヌルリフィルのような樹脂フィルム系に書いたとき)
- 乾燥に伴ってコーヒーリング効果で析出した色素凝集物が筆記線周縁部に輸送される環境にあるとき
- 黒い紙に書いたとき
- 濃いインクを用いたとき
- インクの中にフラッシュを生じうる色素が、原料として一定濃度以上含まれていたとき
「フラッシュ」の見え方
以下のような見え方を「フラッシュ」と呼べるようです。
- フラッシュの色は、インクの液色とは異なる
- 金属的な光沢がある
- 筆記線の周縁部など、インクが濃く溜まる位置に現れる
- 色合いや光沢は、どの角度から見てもほぼ同じ
「フラッシュ」実践
参照したnoteでは色素に着目してまとめられていました。
どのインクがフラッシュしやすいのか、僕の持っているインクを「フラッシュ」の発生条件をもとに実践してみたいと思います。
準備物
紙は「ツバメのインクコレクションカード」「ヌルリフィル」「上質紙(黒)」
フラッシュの条件にあった紙の条件
- インク吸収の弱い(インクがしみこみにくい)材質に書いたとき(特にヌルリフィルのような樹脂フィルム系に書いたとき)
- 黒い紙に書いたとき
とあったので、この条件から
- 「ツバメノートのインクコレクションカード」
- 「ヌルリフィル」
- 「上質紙(黒)」
この3種類を選びました。
使用したインク
濃い青系のインクだとフラッシュしやすいかなと思って選んでみました。
パイロット 色彩雫「深海」「紺碧」「月夜」
セーラー 四季織「夜長」 「蒼墨」
プラチナ ブルーブラック「富士」
モンブラン 「ミッドナイトブルー」
ペリカン 「ブルーブラック」
パーカー 「ブルーブラック」
使用する筆記具
「綿棒」「ホコロ 筆文字」
カード作成時はできるだけ同じ条件になるように書く
できるだけ同じ条件になるように「インクコレクションカード」「ヌルリフィル」「上質紙(黒)」をどのようにインクをのせていくか決めました。
まず以前紹介したパイロットの色彩雫「紅葉」を使って作ってみました。
「ツバメノート インクコレクションカード」
インク瓶は綿棒でたっぷりとインクをつけて塗ります。
文字はホコロの筆文字で記入しました。
上から、「メーカー」「インク名」「記入日」です。
ツバメノート インクコレクションカードについてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
よかったら参考にしてください。
「ヌルリフィル」
宝石部分は綿棒でたっぷりインクをつけます。
文字はツバメノートのコレクションカードと同じくホコロを使いました。
上質紙(黒)
名刺用の黒い上質紙です。
白色のスタンプパッドとスタンプを使って作りました。
他のカードと同じようにインク瓶の部分は綿棒でたっぷりとインクをのせました。
文字はホコロでメーカー名、インク名、記入日と書き込みました。
という感じです。
それでは順にどうなったか見ていきたいと思います。
パイロット 色彩雫 「深海」
上質紙(黒)を見ると、レッドフラッシュしているのが分かるかと思います。
ツバメノート、ヌルリフィルでも赤くフラッシュしているのが観察できますね。
パイロット 色彩雫 「紺碧」
「深海」に比べるとフラッシュの具合は少ないですね。
赤い金属っぽい光沢が観察できますね。
たしかにフラッシュは観察できますが、上質紙では文字が見えにくいですね。
僕の写真の技術にも問題があるかもしれませんが、そこまでフラッシュしている感じはないですね。
パイロット 色彩雫 「月夜」
確かにフラッシュはしていますが、ヌルリフィルでは宝石部分の縁が若干フラッシュしてるかなって感じになりました。
「紺碧」よりはフラッシュしているかなって感じですかね。
ヌルリフィルの使い方はもうちょっと工夫した方がいいのかな…
ツバメノートではインク瓶に塗った縁がしっかりフラシュしているのが観察できますね。
セーラー 四季織 「夜長」
ツバメノートでは、光の加減で若干フラッシュしているかなって気もしますが、ほどんどフラッシュが気にならない程度です。
それよりも一番興味がわいたのが、上質紙(黒)でのフラッシュ具合です。
拡大したのを見てみると、中央部はやや赤っぽいフラッシュが観察されます。
縁は光を当てることでフラッシュらしい金属のような光沢が観察できます。
これが赤っぽい光沢ではなく、少し銀緑色っぽい光沢が観察できました。
同じ青系統のインクでも、レッドフラッシュだけでなく、こんな色のフラッシュも観察できるんですね。
セーラー 顔料インク「蒼墨」
ツバメノートを見ると、インクが濃くなっている部分は若干フラッシュしているのが観察できます。
ヌルリフィルでは、インクがかなり濃くなっている部分は赤紫っぽいフラッシュが観察できますね。
ただ、上質紙を見るとフラッシュといえる光沢が観察できません。
ツバメノートやヌルリフィルで観察できたのはフラッシュではないかもしれませんね。
プラチナ ブルーブラック「富士」
ツバメノートでは文字部分でも縁が赤くフラッシュしているのが観察できました。
上質紙を見ても金属っぽい赤い光沢が観察できました。
モンブラン 「ミッドナイトブルー」
ツバメノートでインク瓶に塗った部分の縁がしっかりと赤くフラッシュしているのが観察できました。
上質紙でも赤い金属のような光沢が観察できます。
ヌルリフィルでは、インクが乾燥するにつれ徐々に青い要素がなくなっていき、写真のようにグレーっぽい色になってしまいました。
僕がヌルリフィルの使い方を誤っているのかちょっと不安になってきました…
ペリカン 「ブルーブラック」
赤というより、ピンクゴールドのようなフラッシュが観察できました。
明るいピンクっぽい光沢がきれいですね。
パーカー 「ブルーブラック」
ツバメノートを見ると、赤いフラッシュかと思ったんですが、上質紙が乾いたのを観察して驚きました。
「紅葉」で観察できたような金色のフラッシュでした。
これもまたきれいですね。
実践してみて
今回は青色を中心にフラッシュの具合を実践してみました。
同じような青系統のインクでもフラッシュする具合、色など様々なんですね。
インクだけでなく紙によってもかなりフラッシュする具合が違うのも面白いですね。
上質紙(黒)がしっかりフラッシュしてくれたのが良かったです。
今後の課題としては、ヌルリフィルの使い方に難があったかなと思っています。
もう少しいろんなインクののせ方を考えて、一番インク本来の色が観察できるように工夫したいと思います。
最後に
今回はインクのフラッシュについて紹介しました。
青以外にもフラッシュする色素として赤や紫などがあるようです。
すでに実証された条件下でのフラッシュ観察でしたがいかがだったでしょうか。
今回観察に使ったどのインクよりも、前に紹介したパイロットの色彩雫「紅葉」が金色にフラッシュする様子がきれいでした(笑)
皆さんのインク選びの一助になれば幸いです。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
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