2023年12月から始めた万年筆インクの耐光実験も2年以上が経過しました。
いろんなインクが2年という時を経てどうなったのか。
実験開始前の状態と比較しながら順にみていきたいと思います。
この記事をおすすめする人
万年筆に使われているインクの耐光性がどの程度なのか知りたい
インクがどのように変化するのか知りたい
耐光性はインクの種類(染料・顔料・古典)によって退色に違いがあるのか知りたい
実験前と2年後の比較
実験方法については準備手順等の詳細は耐光性実験の【準備編】で紹介しています。
よかったら参考にしてください。
昨年投稿した実験1年後の経過から傾向としては3パターンに分けられます。
- ほぼ退色して元の色が分からなくなり、筆記線も分からなくなる(退色し読めない)
- 退色して元の色は分からなくなったが、筆記線が確認できる(退色したが読める)
- 多少退色したが色が識別でき、筆記線が確認できる(ほぼ退色しない)
この3パターンに分類して経過を見ていきたいと思います。
使用している写真は左が実験0日目の様子、右が実験1年後の様子、さらに下に2年後の様子というように並んでいます。
ほぼ退色して元の色がわからなくなり、筆記線も分からなくなったもの
染料インク
パイロット 色彩雫 深海


1年経過時点での状態でほぼ退色して見えなくなってしまっていました。

2年経過し、よく見るとわずかに筆記線が見えるかなという感じですが、ほぼなにも見えなくなってしまっています。
パイロット 色彩雫 紅葉


1年経過したものは、わずかに赤い色だったかなという印象は残しつつ、筆記線はほぼ確認できない状態でした。

2年経過すると完全に退色して赤色だったか判別できない状態となり、わずかに筆記線が見えますが十分読める状態ではなくなってしまいました。
セーラー 万年筆 夜桜


1年経過した時点で完全に退色してしまっていました。

2年経ってまた見えるようになったりはしませんね(笑)
モンブラン ミッドナイトブルー


1年経過ではわずかに文字が若干見えていた状態でした。

2年経過し目を凝らせば筆記線がかすかに見える程度で、ほぼ退色してしまいました。
カヴェコ ミッドナイトブルー


こちらも1年経過でほぼ退色した状態となっていました。

2年経過し、じっくり見れば筆記線が確認できなくもないですが、ほぼ消失している状態です。
顔料インク
セーラー万年筆 ストーリア レッド


1年経過時点で顔料インクにしてはかなり退色してしまったという印象でした。

2年経過してもわずかに赤っぽい印象は残っていますが、筆記線は確認できないところがかなりありました。
耐光性があると言われている顔料インクですが、2年間紫外線にさらすという過酷な条件下では厳しかったようです。
古典インク
古典インクには2年経過しても完全に退色してしまったものはありませんでした。
退色して元の色は分からなくなったが、筆記線が確認できるもの
染料インク
寺西化学工業 ハイカラインキ アンティークブラック


1年経過時点では元の色は判別できませんが、文字は読めていました。

2年経過した時点でさらに退色は進んだものの筆記線は十分確認できる状態でした。
ペリカン ブリリアントブラック


1年経過で色は変わってしまいましたが、文字は十分読める状態でした。

2年経過時点で徐々に退色はしていっていますが、文字は確認できますね。
モンブラン ミステリーブラック


1年経過時点で元の色は判別できない状態にまで退色が進んでしまっていますが、まだ文字は読める状態でした。

2年経過した時点でかなり退色はすすみましたが、かろうじて文字は読める程度には残っています。
パーカー ブルーブラック


1年経過時点でグレーっぽい色に変化しましたが、文字は識別できる程度には残っていました。

2年経過時点では、残った色の印象は維持されており、筆記線も十分確認できる状態でした。
ペリカン ブリリアントブラウン


1年経過時点では多少色調に変化はありましたが、元の茶色系カラーは判別できました。

2年経過時点でも茶色っぽい色が残っているようにも見えますが、どうも染料の色素とは別のもののように思います。
なので、退色したが読めるという判定にしました。
パイロット 染料インク 蛍火


1年経過時点で徐々に退色は進んでいましたが、元の色は判別できるレベルで、もちろん文字も読める状態でした。

2年経過時点でかなり退色が進んでいます。
筆記線はかろうじて読めるかなという程度なので少し悩むところですが、一応読めると判定しました。
寺西化学工業 スパークルインク ミスティブラック


1年経過時点ではインクの色が多少残り、ラメがしっかり残っているので、色調はある程度判別できていました。

染料そのものは退色してしまい、ラメだけが残っているという印象で、1年経過時点に比べラメの輝きが減っています。
筆記線は十分確認できますね。
顔料インク
退色したが読めるという分類に当てはまるものはなかったです。
古典インク
プラチナ万年筆 ブルーブラック 富士


1年経過時点で、染料に使われている青色は退色し茶色っぽい色だけ残り、文字は十分読めるレベルで残っていました。

2年経過時点でも、1年経過時点とほぼ変わらない状態が維持されており、筆記線は確認できました。
プラチナ万年筆 フォレストブラック


「富士」と同じく、使われていた緑の染料は消えてサビっぽい色が残っていました。また、文字は十分読める状態でした。

2年経過時点でも、他の古典インク同様の経過をたどっている印象です。
プラチナ万年筆 カシスブラック


こちらも1年経過時点で色素はほぼなくなってしまっていますが、文字は十分読めますね。

2年経過し、わずかに色が薄くなっているという印象ですが、筆記線は確認できる状態でした。
ペリカン ブルーブラック


1年経過時点で青色の色素はすっかりとなくなって、元の色は判別できない状態でしたが、文字は読めました。

2年経過し、退色具合の印象はほぼ変わらず、文字は十分確認できる状態でした。
多少退色したが色が識別でき、筆記線が確認できるもの
染料インク
セーラー 万年筆 夜長


1年経過した時点でしっかりと色が判別できる状態でした。

2年経過し、若干退色が進んだ印象ですが、インクカラーはほとんど維持されており、筆記線は十分確認できる状態でした。
顔料インク
セーラー万年筆 蒼墨


1年経過時点では若干色調に変化があった程度で大きな変化はありませんでした。

1年経過時点から、発色具合の印象はほぼ変わらず、色、筆記線ともに維持されていました。
セーラー万年筆 青墨


若干色調が明るくなっていますが、元の色は十分判別できるレベルでした。

2年経過した時点でも色の判別は十分可能なレベルで、筆記線もしっかりと維持されていました。
セーラー万年筆 ストーリア パープル


1年経過時点では若干退色しているかなという印象はありますが、元の色は十分判別できるレベルでした。

2年経過し、わずかに色が薄くなったかなという印象ですが、色の識別はできますし、筆記線は十分確認できる状態でした。
古典インク
古典インクには退色しなかったものはありませんでした。
耐光実験2年経過時点でのまとめ
この実験で使用したインクの種類は染料インク13種、顔料インク4種、古典インク4種の全21種。
実験開始から1年経過時点から2年経過した時点でどう変化したのか、結果を表にまとめてみました。
| 退色し読めない | 退色したが読める | 退色しなかった | |
| 染料インク | 5→5 | 4→7 | 4→1 |
| 顔料インク | 0→1 | 0→0 | 4→3 |
| 古典インク | 0→0 | 4→4 | 0→0 |
数字は「1年経過時点での数」→「2年経過時点での数」です。
染料インクの経過まとめ
2年経過でかなり退色したものの読めるレベルで残った
1年経過時点で、読めなくなったものが5種、退色したが読めるものが4種、退色しなかったのもが4種ありました。
さらに1年が経過し、読めなくなったものは5種と変わらず、退色したが読めるものが7種に増え、退色しなかったものが1種となりました。
2年間光にさらした状態でも筆記線が確認できるものが多いのに驚きました。
| 退色し読めない | パイロット 色彩雫「深海」 パイロット 色彩雫「紅葉」 セーラー 四季織「夜桜」 モンブラン 「ミッドナイトブルー」 カヴェコ 「ミッドナイトブルー」 |
| 退色したが読める | 寺西化学 「アンティークブラック」 パイロット 色彩雫「蛍火」 ペリカン 「ブリリアントブラック」 ペリカン 「ブリリアントブラック」 モンブラン 「ミステリーブラック」 パーカー 「ブルーブラック」 寺西化学 「ミスティブラック」 |
| 退色しなかった | セーラー 四季織「夜長」 |
2年経過しても退色しなかったセーラー万年筆の「夜長」は、顔料インクと同等の耐光性があるといっていいと思います。
退色具合が古典インクと似ている
染料インクの退色具合について、古典インクとよく似た経過をたどっているような印象を受けます。


例えば、染料インクの寺西化学工業のアンティークブラックと古典インクのペリカンのブルーブラックの2年経過後の様子を比べてみると、退色具合がよく似ていますよね。
古典インクの残っている色は染料が退色した後の酸化鉄です。
染料インクでもこのような経過をたどるインク内には、酸化鉄のような金属を含んだ構造をもつ色素が使われているんじゃないかと思います。


また、パーカーのブルーブラックは茶色っぽい色にはならず、グレーっぽい色に変化した状態で2年間維持されていました。
寺西化学工業のアンティークブラックなどに使われている染料とはまた別の金属を含んだ色素が使われているんでしょうか。
顔料インクの経過まとめ
実験に用いた顔料インクはストーリアのレッドを除きほぼ退色しなかった
ストーリアのレッドを除き、顔料インクもしっかりと元の色が判別でき、十分文字も判読できるレベルでした。
顔料インクの耐光性の高さが分かる結果になったかと思います。
赤色の宿命
顔料インクの中で、ストーリアのレッドだけがほぼ退色してしまいました。
これは赤色の宿命とも言えますね。
赤色は光の中で最もエネルギーの高い「青~紫外線」の光を吸収するという性質があります。
そのため分子結合へのダメージが蓄積され、耐光性の高い顔料インクであっても2年間紫外線にさらされるという過酷な状況下では耐えられなかったと思われます。
他にも退色してしまった要因はありそうな感じもしますが、赤色であったことが大きな要因ではないでしょうか。
古典インクの経過まとめ
古典インクは残留した酸化鉄は耐光性がある
インクに使われている染料は退色してしまいましたが、酸化して定着した部分はしっかりと残っていますね。
色調に変化はあっても、耐光性という点では十分高い能力があると思います。
万年筆インク耐光性実験の今後
インクカードがかなりヨレヨレになってしまいました。
風で額が飛ばされたり、家族に蹴られたり(笑)しましたが何とか2年間持ちこたえてくれました。
インクカードを収納している額が相当ボロボロになってしまっているので、このままベランダに置いておくのも限界かなという感じです(汗)
今後は屋内で南向きの窓に固定して検証を続けていこうと思います。
ちょっと条件が変わってしまいますが、そこまで大きな影響はないんじゃないかなと思っています。
ただ、窓に設置することで「あの家、急に窓によくわからないものを飾って何をしているんだ?」と思われそうな位置になるので、ご近所様との関係に影響は出てくるかもしれないですが(笑)
最後に
今回は万年筆インクの耐光性実験開始から2年後の結果について報告しました。
この記事が皆さんの万年筆インク選びの一助になれば幸いです。
次いで「染料インクの耐光性実験」についてもまとまり次第レポートしたいと思います。
最後まで読んでくれてありがとうございました。



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