万年筆のインクは種類が豊富で実に多彩です。
同じ系統の色、例えば青系といってもそれぞれに特徴がありますよね。
どんな色素が含まれているのか、メーカーによってどれだけの違いがあるのか、色素の組み合わせを調べる方法がないか探していると
「ペーパークロマトグラフィー」という手法を見つけました。
とても簡単な方法で色素を分離して調べられる手法です。
今回はこの「ペーパークロマトグラフィー」について紹介します。
この記事をおすすめする人
ペーパークロマトグラフィーについて知りたい
インクの色素の組み合わせが知りたい
そもそもクロマトグラフィーって何?
クロマトグラフィーとは、成分の吸着性その他の違いを利用して、混合物試料から成分を分離・分析する方法のひとつです。
ロシアの植物学者ツウェットが、植物の葉の色素を分離したのが最初といわれ、この学者がクロマトグラフィーと命名しています。
クロマトグラフィーの語源は、ギリシア語の「色」を意味する「chroma」と、「描く」を意味する「graphos」ということだそうです。
今回紹介するペーパークロマトグラフィーの他に
ガスクロマトグラフィー
(気化しやすい化合物の同定・定量に用いられる機器分析の手法)
薄層クロマトグラフィー
(ろ紙の代わりにガラス板とシリカゲル等の吸着剤を用いて分離する方法)
カラムクロマトグラフィー
(ガラス管にシリカゲルなどの吸着剤を詰め、上部から試料液および展開液を流し、試料液中の成分が吸着力の差により分離する方法)
など、さまざまな種類のクロマトグラフィーがあります。
ペーパークロマトグラフィーって何?
ペーパークロマトグラフィー(またはろ紙クロマトグラフィー)は、その名の通り紙を使ったクロマトグラフィーです。
水性インクであれば紙と水、油性インクであれば紙とアルコールを使って簡単にできます。
色が分離する仕組み
クロマトグラフィーでは、「固定相」と「移動相」という2つの相の中を、試料(混合物)が移動して分離されます。
ペーパークロマトグラフィーでは、
紙が「固定相」、水が「移動相」、インクが「試料」ということになります。
ろ紙を水に入れると、水は紙繊維の間を毛細管現象によって上昇していきます。
この時に溶媒となる水に溶けだしたインクが一緒に移動していきます。
インクに含まれている色素は、それぞれの色素によって親水性や紙の吸着性が違います。
親水性が良い色素は水によく溶けて紙繊維を上昇しやすく、
親水性の悪い色素は水に溶けにくいために紙繊維に吸着され、
徐々に上昇しなくなります。
また、ろ紙への吸着力が弱い成分は移動速度が速く上側まで移動し、
吸着力が強い色素は移動速度が遅いため下側のままとなります。
このように、色素それぞれの親水性と吸着力の違いにより成分を分離することができます。
それでは実際にペーパークロマトグラフィーをやってみましょう!
ペーパークロマトグラフィーの実際
ペーパークロマトグラフィーに必要な物品
コーヒーフィルター(白いもの・2~4人用)
僕は100円均一で買ってきました。
一袋に80枚も入っています。
実験し放題ですね。
透明のコップやビン
素材はガラス以外にプラスチックでも大丈夫です。
透明を選んだのは、ろ紙を上がってくるインクが見やすいからです。
割りばし
割りばしは割れていないものを使用します。
水
水は少しあれば大丈夫です。
はさみ
ろ紙を切るのに使います。
クロマトグラフィーで調べたいインク
今回行うクロマトグラフィーは水に溶ける色素を対象としています。
ですので、インクは水性染料インクのものを選びます。
耐水性のある顔料インクは今回の水を使ったクロマトグラフィーでは色素を分離することができないので注意してください。
今回準備したインク
今回は、色彩雫の青系のインクを選んでみました。
- 「深海」
- 「月夜」
- 「孔雀」
同じメーカーの青系インクで、色素の組み合わせにどんな違いがあるのか調べてみたいと思います。
ペーパークロマトグラフィーの準備
まずコーヒーフィルターとはさみを準備します。
どの部分を切ればいいか分かりやすいように、フィルターに斜線をいれています。
斜線がない部分を使います。
ではまず、フィルターの接着している部分を切り落とします。
切ったらこんな感じになります。
次にこの扇形の部分を切り落とします。
何センチ切るとかこだわらなくていいので、だいたい写真のあたりが切れていれば大丈夫です。
次に残った扇形の部分を切って四角いかたちにします。
最期にこれを細長く切っていきます。
このつながっている部分を下にして切ります。
幅はだいたい5㎜から10㎜程度で大丈夫です。
多少歪んでもだいたいまっすぐであれば、とくに問題はないかと思います。
伸ばすとこんな感じになります。
できましたか?
ビンに水を入れる
ビンに水を入れます。
ビンの底に1㎝程度入っていれば大丈夫です。
ろ紙にインクをつける
つけるインクの量は適当です。
比較するのであれば、同じくらいの量に合わせましょう。
インクをろ紙にのせたら油性ボールペンなど、水に流されないもので横に印をつけます。
インクが流れるとどこが開始点だったか分からなくなるからです。
ろ紙にインクをつけたら、反対側の端に何のインクをつけたのかメモをしておきます。
同じ色だと、どれがどれだったか分からなくなりますからね。
割りばしの真ん中くらいにインクを乗せたろ紙を挟みます。
これで準備は完了です。
それでは順に調べてみたいと思います。
実験開始
深海
瓶の中に入れました。
ろ紙の端を水に浸けます。
ろ紙にのせたインクが水に浸からないように気を付けてくださいね。
徐々にろ紙が水を吸い上げ、インクが分離していきます。
2分程で水はここまで上がってきました。
ろ紙を取り出して自然乾燥します。
月夜
同じ手順で実験していきます。
2分程度水に浸けています。
月夜はこんな感じに分離していきました。
孔雀
最後に孔雀が分離していく様子です。
ペーパークロマトグラフィーの結果
瓶から取り出して乾燥させました。
それぞれ見ていきましょう。
深海
やや濃いめの青が残っていますが、上に進むにつれうっすらとピンク色が見えますね。
さらにその上にはうっすらとですが黄色が見えますね。
月夜
深海に比べると明るい青ですね。青がずっと上まで登っているので分かりにくいですが、青の外側にうすく黄色が見えますね。
孔雀
孔雀も深海より鮮やかな青ですね。
孔雀も上に上るにつれて黄色が見えますね。
深海、月夜、孔雀を並べて比べてみる
深海は、月夜、孔雀に比べ、青色そのものが違っていますね。
月夜、孔雀の青色はよく似ていますし、分離もよく似ていますね。
分離させる前は深海と月夜は似ているように思いましたが、
色素の組成は月夜と孔雀が似ているという結果でした。
最後に
今回はペーパークロマトグラフィーで万年筆インクを調べてみました。
色素の組み合わせの違いが分離させることでよく分かりますね。
実験していてとても面白かったです。
今回の反省点としては、もう少しつけるインクの量を増やしたり、水に浸けておく時間を長くしてしっかり分離させるほうがもっと分かりやすかったかな?というところです。
室温や湿度など条件が変わると結果も変わってくるかもしれません。
あくまで素人実験なので、そこまで厳密にこだわる必要はないかな?
とても簡単な実験なので、興味のある方はぜひやってみてください。
小学生の夏休みの自由研究とかでも活躍してくれそうですね。
またこの手法を使って
メーカーでの違いを調べてみたり、
顔料インクや古典インクがどうなるのか実際に見てみたいし、
溶媒を消毒用アルコールに変更するとどうなるかなど、
いろんな実験を試してみたいと思います。
また実験したらレビューしたいと思います。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
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