ボールペンの替え芯にはメーカーそれぞれに規格があります。
その中でもかなり汎用性の高い替え芯がC-300系と呼ばれるリフィル(替え芯)です。
このC-300系リフィルについては奥が深いです。
とりあえず僕が分かる範囲でまとめてみました。
この記事をおすすめする人
そもそもC-300系リフィル(替え芯)ってどういうものか分からない
C-300系リフィルにはどんな種類があるのか知りたい
ボールペンのリフィル(替え芯)の分類
ボールペンのインクには水性、油性、ゲルの3種類があります。
そして、このインクの種類別にリフィル(替え芯)の規格があります。
まずは「インクの種類別にリフィル(替え芯)の規格がある」という事を知っておいてください。
C-300系のリフィル(替え芯)とは
C-300系の由来はOHTOの水性ボールペンリフィル
C-300系と呼ばれるもとになったのは、OHTO(オート)が作っている水性ボールペンリフィルの型番です。
OHTOの水性ボールペンリフィルの型番が「C-3xx」。
xxには「04」「05」「07」「10」の数字が入ります。
C-305だとペン先のボールサイズが0.5mm、C-307だとボールサイズが0.7mmという感じですね。
このリフィルの型番からC-300系と呼ばれるようになり、いつの間にか定着したようです。
OHTOのC-3xxはJIS規格では形式記号「A」
少しややこしい話になりますが、水性ボールペンリフィルのJIS規格は形式記号「A」「B」「C」「D」と4種類に分けられています。
この中で、OHTOのC-3xxは「A」という規格になります。
「A」型のサイズは
全長111mm(±2)、外径6.2mm(±0.1)、尾栓外径6.3mm(±0.3)、ペン先径2.3mm(±0.1)
となっています。
このサイズは後々もう一度触れます。
「A」型以外の形式記号について
「B」型のサイズ
全長87mm(±2)、外径 6.2mm(±0.1)、尾栓外径6.3mm(±0.3)、ペン先径2.3mm(±0.1)
「B」型は全長が87mmと「A」に比べて短いですが、その他外径やペン先径などは「A」とほぼ同じ規格です。
「C」型のサイズ
全長110mm(±1)、外径6.3mm(±0.15)、ペン先径2.5mm(±0.05)
「C」は「A」によく似た規格ですが、全長が110mmと微妙に短く(1mm)、ペン先径2.5mmと若干太い(+0.2mm)です。
また「C」はヨーロッパ系のローラーボールに採用されていることが多いようで、ヨーロッパサイズとも呼ばれているようです。
「D」型は「A」「B」「C」のどれにも当てはまらない規格が「D」に分類されています。
これまでのまとめ
色々と述べましたが、
「C-300系の基となったOHTOの品番「C-3xx」というリフィルの規格は
形式記号「A」という水性ボールペンリフィルの規格」
ということです。
でも、現在C-300系と呼ばれる互換リフィルで挙げられているのは、水性リフィルだけでなく、油性リフィルやゲルインキリフィルも含まれていますね。
水性リフィルの規格なのに油性やゲルインキのリフィルにどうして互換があるのか不思議ですよね。
次にゲルインキボールペンリフィルの規格についてまとめてみました。
ゲルインキリフィルの規格
ゲルインキリフィルの規格は「J」「K」「L」「G2」「N」の5種類に分類されます。
「N」型というのは「J」「K」「L」「G2」と寸法や形状が異なるものが相当します。
「G2」規格について
「G2」は今回解説するC-300系リフィルとは違いますが、少し触れておきます。
この「G2」についてですが、これは油性ボールペンリフィルの規格と同じ形式記号が使われていますね。
俗に「パーカータイプ」とも呼ばれる規格でご存知の方も多いと思います。
「G2」はその名の通り、油性ボールペンリフィルと同じ規格です。
なぜ油性リフィルと同じ形式記号が使われているか
ゲルインキは油性や水性インクより後に開発されたインクです。
リフィルを作る際、油性や水性リフィルの規格に準じて作られていることが多いです。
特に「G2」規格のようにすでにいろんなメーカーで作られている規格を採用することで、同じ市場で販売できるというメリットがありますね。
これは後述する「J」「K」「L」の規格でも同じことが言えそうです。
「G2」型のゲルインキリフィルには
- OHTOの「GS02」に使われている「PG-M05NP」
- パーカーの「ジョッター ジェルペン」に使われている「2165505」
などがあります。
油性「G2」型のボールペンに流用できるので、いろんな軸でゲルインキが使えますね。
「G2」規格は幅広く採用されている規格で汎用性がとても高く、いろんなメーカーから「G2」規格のリフィルが出ています。
「G2」規格のリフィルについてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
よかったら参考にしてください。
ゲルインキリフィルの形式記号「J」「K」「L」について
今回C-300系を説明する上で注目するゲルインキの規格は「J」「K」「L」の3種類です。
それぞれの規格の詳細と水性ボールペンンリフィル「A」型の規格
全長111mm(±2)、外径6.2mm(±0.1)、尾栓の外径6.3mm(±0.3)、ペン先径2.3mm(±0.1)
と比べてみたいと思います。
ゲル「J」型
「J」型のサイズ
全長111mm(±1.0)、外径5.5mm(±0.15)、ペン先径2.3mm(±0.05)
全長は「A」型と同じ111mmですね。
外径は0.7mm細いです。
ペン先径は[A」型と同じ2.3mmです。
規格を見る限り「A」型の軸に「J」型は入りそうな感じがします。
ですが外径が細い分、リフィルの固定が上手くいっていないと軸の中でカタカタと動く可能性はあります。
またゲル「K」型、ゲル「L」型より細いので、ゲル「K」型、ゲル「L」型の軸にも物理的には入りそうですね。
ただこれも軸の内部構造によっては、リフィルが安定しない場合があるのでいろんなパターンで検証する必要があります。
逆に「J」型の軸に「K」型、「L」型のリフィルは物理的に困難な場合が多そうです。
「J」型のリフィルには
- サクラクレパスのボールサインIDに使われている「R-GBN-05」
などがあります。
ゲル「K」型
「K」型のサイズ
全長111mm(±1.0)、外径6.1mm(±0.15)、ペン先径2.3mm(±0.05)
全長はゲル「J」型と同様に水性「A」型と同じ111mmですね。
外径は0.1mmと若干細い程度でほぼ同じ太さです。
ペン先径は水性[A」型と同じ2.3mmです。
写真はユニボールワンのリフィル「UMR-05S」です。
規格を見る限り水性「A」型の軸にゲル「J」型と同じく入りそうな感じがします。
「J」型に比べ外径が水性「A」型に近いためリフィルの固定がある程度安定しそうです。
また「L」型の軸に「K」型のリフィルは入りそうですが、口金部分に0.2mmの隙間ができるため筆記時にカタついてしまいそうです。
「K」型のリフィルには
- 三菱鉛筆のuniball one(ユニボールワン)に使われている「UMR-05S」
- ゼブラのサラサグランドに使われている、通称「JF芯」と呼ばれる「JF0.5」
- ぺんてるのエナージェルに使われている「LRN5」
などがあります。(写真)
ゲル「L」型
「L」型のサイズ
全長111mm(±1.0) 、外径6.0mm(±0.15)、ペン先径2.5mm(±0.05)
全長は水性「A」型と同じ111mmです。
外径については水性「A」型より0.2mm細くなっています。
ペン先径はゲル「L」は水性「A」型より少し太い2.5mmとなっています。
「L」型はC-300系に似ていますが、ペン先径が太いのでC-300系のペンに入れようとしても、リフィルが口金部分から出てこない可能性が高いです。
わずか0.2mmと思われるかもしれませんが、この0.2mm太いためにペン先が出てきません。
「J」型、「K」型、「L」型のリフィルを並べてみましたが、肉眼ではほとんどサイズの違いが分からないですよね。
今作られているボールペンの口金部分の精度がそれだけいいという事かと思います。
もし「L」型を使用する場合は、口金を拡張する必要があります。
また、「L」型の軸に「J」「K」型を使用する場合は、口金とリフィルに隙間ができてしまい、筆記時にペン先がカタついてしまうかなと思います。
ゲル「L」型は水性「C」型と互換がある可能性がある
ここで、水性「C」型(ヨーロッパサイズ)
全長110mm(±1)、外径6.3mm(±0.15)、ペン先径2.5mm(±0.05)
とゲル「L」型の規格を比べてみます。
全長は水性「C」型に比べ1mm短く、外径は0.3mm細くなっています。
全長が短く、外径が細いので水性「C」型の軸内での固定が課題になりそうです。
固定がしっかりできればペン先径が同じ2.5mmなのでゲル「L」型は水性「C」型(ヨーロッパサイズ)に対応できそうですね。
「L」型のリフィルには
- パイロットのジュースに使われている「LP2RF-8UF」
などがあります。
ゲルインキリフィルの互換性については日本筆記具工業会の互換を検証した結果が掲載されています。
その表には「「J」型「K」型の替え芯はすべてではないが、互換がある組み合わせがある」ということです。
互換表へのリンクを貼り付けておきますので、よかったら参考にしてください。
(エクセルで開きます)
なぜゲルインクリフィルの規格が水性リフィルの規格と似ているのか
先の「G2」リフィルと同じで、ゲルインクは油性、水性インクよりも後発のインクです。
なので、既存の規格にある程度寄せて作った方が製造や販売などでのメリットが多かったんじゃないでしょうか。
また、油性リフィルよりも水性リフィルに寄せた理由としては、インクタンクの大きさかと思います。
インクが同じ量の場合、ゲルインキに比べて油性インキの方が圧倒的に筆記距離が長いです。
水性インクやゲルインクは筆記距離を伸ばそうとすると、どうしてもインクタンクを大きくしないといけません。
油性リフィルのようなインク容量が少ないタンクの規格より、水性リフィルのようなたっぷりインクが入る規格を選んだんじゃないかと思います。
つまり、ゲルインクは他のインクよりも後発で、既存の規格を参考にしてインク容量の多い水性リフィルの規格に寄せた結果、水性「A」型に近いC-300系と呼ばれるリフィル達が生まれたんだと思います。
水性「A」型の軸にゲルインキのリフィルが使用できるか検証
いろんなパターンを検証したいところですが、今回はOHTO(オート)のCR01を使ってゲルインキリフィルが使用できるか検証してみます。
「J」型リフィル
サクラクレパス「R-GBN-05」
きっちりとハマり、振っても中から異音は聞こえず安定しています。
筆記も問題なくできますね。
口金とリフィルの隙間はほとんどありません。
そのため筆記時にペン先がカタつくことはないです。
「K」型リフィル
三菱鉛筆「UMR-05S」
これも問題なく入りました。
軸内でリフィルが動揺することはないですね。
筆記も問題なくできました。
ゼブラ「JF0.5」
こちらも軸の中でしっかり安定しており、異音は聞こえません。
筆記についても特に問題なかったです。
ぺんてる「LRN5」
こちらも軸内での安定はいいですし、筆記にも問題はなかったですね。
「L」型リフィル
パイロット「LP2RF-8UF」
先述しましたが、互換があるか実際に「L」型リフィルでも試してみました。
ほぼ予想通りというか、規格通り0.2mmの差によってペン先が口金部分から出てきません。
無加工では水性「A」型の軸にはゲル「L」型は使用できないですね。
どうしても使用したい場合は口金を拡張する必要があります。
ゲルインクリフィルのまとめ
- C-300系と呼ばれるゲルインクリフィルの規格は「J」「K」型
- 「J」型リフィルを「K」型の軸を使用する場合、「J」型が「K」型より外径が細い為リフィルが軸内で安定しない場合がある
- 「K」型リフィルを「J」型の軸に使用する場合、「K」型の方が太い為物理的に軸に入らない場合がある。
- 「L」型の軸に「J」「K」型のリフィルを入れるのは可能だが、ペン先径が0.2mm違うのでカタつく可能性がある
- 「L」型リフィルは「J」「K」型の軸に入れようとしてもペン先が0.2mm太くなっているため口金が合わず、ペン先が出てこない
- 「J」「K」型の軸に「L」型を使用する場合には口金を拡張するなどの改造が必要
- 水性「A」型の軸に「J」型、「K」型のリフィルを入れることができる
- (ただし、今回OHTOのCR01でしか検証していないので、すべての水性「A」型に使用できるとは限らないのでご注意ください。)
という感じですね。
このほか、リフィルのペン先部分の形状の違いから同じ規格でも軸の構造によっては入らない場合もあるようですが今回は省略します。
油性リフィルについて
では最後に油性リフィルについてです。
ゲルインクと違い、先発である油性リフィルがなぜ水性リフィルと互換があるのかというところです。
油性リフィルの規格
油性リフィルはJIS規格では「A」~「H」に分類されています。
この中で、よく知られているのが「D」型と「G2」型です。
「H」型というのは「A」型から「G2」型までの規格に当てはまらないものになります。
もういちど「A」型の規格を確認してみると、
全長111mm(±2)、外径6.2mm(±0.1)、尾栓外径6.3mm(±0.3)、ペン先径2.3mm(±0.1)
というものでした。
油性リフィルの「A」型から「G2」型それぞれの規格について詳細は省略しますが、この「A」型から「G2」型の中に全長111mmという規格、実はないんです。
でもC-300系リフィルにジェットストリームのリフィル「SXR-〇」が挙げられていますよね。
(〇の部分にはボールサイズの数値が入ります。写真はボールサイズが0.5mmの「SXR-5」です)
「SXR-〇」のサイズを確認すると
全長111.2mm、一番太い部分の外径6.23mm、ペン先径2.34mmです。
見た目は他のC-300系とは似てませんが、数値化すると思いのほかそっくりですよね。
「SXR-〇」がゼブラのサラサグランドで使用できるか検証
ゲル「K」型のゼブラのサラサグランドにジェットストリームのリフィル「SXR-〇」を入れてみました。
しっかりノックできてリフィルが軸内でカタカタすることは無いです。
口金もしっかりフィットしていてカタカタすることなく使えます。
パッと見、他のC-300系とかなり違いがあるのにサラサグランドには普通に使えました。
なぜ油性リフィルがゲルリフィルと互換があるのか
ジェットストリームの「SXR-○」の形式記号ですが、既存の油性リフィルの規格「A」~「G2」とは違う規格となるので、「SXR-○」は「H」に分類されます。
ここからは推測ですが、ジェットストリームは低粘度の油性インクという、油性インクでも後発です。
後発であったため、既存の油性リフィルではなく、あえてC-300系に寄せて作成されたのではないかと考えられます。
実際のところは僕には分かりませんが、メーカーにC-300系に寄せるという意思が全くなかったんだとしたら、この「SXR-○」がC-300系リフィルとして互換があるのは単なる偶然かもしれません。
でもジェットストリームは「G2」規格のリフィルを出していますし、「D」型のリフィルもある。
じゃあ「C-300系」も…となるかもしれないですね(笑)
なぜ互換リフィルを求めるのか
なぜ互換を求めるのか、僕なりに考えてみました。
至極簡単な話ですが、「気に入った軸と気に入ったリフィルを組み合わせて使いたい」ということに尽きるんじゃないかと思います。
軸もリフィルも同じメーカーのものが気に入っているのであれば互換を気にすることなく、同じメーカーのリフィルを使い続けていればいい話ですが、
好きなリフィルはあるけど「軸に不満」がある
軸は好きだけど、「リフィルの書き味がいまいち」
軸もリフィルも嫌いじゃないけど「どこか物足りない」と感じる
気に入ったリフィルで「高級な軸を使いたい」
といったいろんな欲求が湧き出て、気が付けば互換を求める旅に出てしまうんじゃないでしょうか。
特に水性リフィルが入る軸は見栄えのいい高級なものが多いから、好きなリフィルで使いたくなりますよね。
最後に
今回は「C-300系」について紹介しました。
メーカーの違うリフィルが使えたらちょっと面白くてロマンがあると思いませんか?
同じ規格であれば、問題なく使える(はず)ですが、実際には微妙なものもあるかと思います。
これまでいくつかC-300系のボールペンを紹介していますので、それらのリフィルと軸を使って、いろんなパターンで互換性を検証できればと思います。
この記事が皆さんのボールペンやリフィル選びの一助になれば幸いです。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
今回の記事で使用したペン達のレビュー記事です。
よかったらこちらの記事も参考にしてください。
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