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【万年筆の基本】万年筆のペン先(ニブ)の話

万年筆
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万年筆を選ぶ上で絶対にチェックしておきたいのがペン先です。

ペン先は字の太さ、素材、形など万年筆を選ぶ上で重要なパーツで、書き味にも大きく影響します。

万年筆のペン先はボールペンの替え芯のように簡単に変えられません。

(不可能ではないですが、すごく手間とお金がかかります…)

ですのである程度ペン先について知ってもらって、万年筆選びに役立ててくれればと思います。

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この記事をおすすめしたい人

ペン先の仕組みが知りたい

鉄ペンと金ペンの違いが知りたい

万年筆の字幅の違いが知りたい

ペン先の基本

ペン先のそれぞれの名称

モンブラン146

ペンポイント
モンブラン 146

ペン先の先端をペンポイントといいます。

ここにはペン先の金属とは別の硬い金属が使われていて、筆記時に紙との摩擦に耐えられるようになっています。

このペンポイントの形によって線の太さが変わってきます。

またこのペンポイントが書き味を大きく左右します。

ここが丁寧に磨かれていれば、紙との摩擦をほぼ感じずにサラサラと書けます。

磨きが雑であったり、ずれていたりすると紙に引っかかってしまい、ガリガリとした書き味になってしまいます。

あまりひどい場合がインクがかすれてしまったり、最悪インクが出なかったりする原因にもなる重要な部分です。

切り割り

ハート穴から先端に向かって入っている線を切り割りといいます。

一般にハート穴から先端に向かってだんだんと細くなっていくようになっています。

これは毛細管現象という現象を利用したもので、インクを先端まで運ぶ通り道になっています。

切り割りの幅や長さがインクの流れを左右し、長いほどインクの流れがよくなります。

ハート穴

ペン先の真ん中ほどに開いている穴の事をハート穴といいます。

昔はハートの形をしていた万年筆が多かったのでハート穴と呼ばれています。

最近のハート穴は丸や楕円が多く、中には穴のない万年筆もあります。

こちらはセーラー万年筆の「ハイエースネオクリア」です。

ハート穴がその名の通りハート型をしていますね。

こちらはラミーの「サファリ」です。

ハート穴は丸型です。

穴が小さいので比較的硬く感じると思います。

こちらはパーカーの「IM」です。

ハート穴がないタイプで、ペン先はほぼしならず堅牢な書き心地です。

ハート穴が小さいほどペン先が開きにくくなるので書き味は硬くなり、穴が大きいほどペン先が開きやすくなり書き味は柔らかくなる傾向があります。

ハート穴がある利点としては、筆圧によるペン先にかかる負荷を分散させるという役目があります。

筆記している時にインクが出にくいとつい高い筆圧で書いてしまいがちになりますよね。

昔の万年筆のペン先は強度が低いものが多かったようです。

インクフローも今の万年筆のように安定していなかったので、インクをなんとか出そうとつい高い筆圧で書いてします。

するとペン先が開きすぎて割れてしまい、壊れて使えなくなってしまいます。

ペン先が壊れるのをできるだけ防ぐためにあるのがハート穴です。

ハート穴があることでペン先の負荷を分散させてくれるので、ペン先が壊れにくくなったということのようですね。

最近はペン先の強度、精度が上がり壊れにくくなったのでハート穴は必ず必要なものという事ではなくなってきています。

ですが、あまり高い筆圧で書くと最近の万年筆でも当然壊れてしまいますので、大事に使うようにしてくださいね。

固定部と弾力部

ペン先の付け根からハート穴までを固定部、ハート穴から先端までを弾力部といいます。

弾力部が長いほどよくしなるペン先となります。しなるほど軟らかく感じ、逆に短いと硬く感じます。

ここまでのまとめ
  • ペンポイントの形で線の太さが決まる。
  • 切り割りが長いほどインクの流れが良くなる。
  • ハート穴が大きいほど軟らかく、小さいほど硬い書き味になる。
  • 弾力部が長いほど軟らかく、短いほど硬い書き味になる。

他に書き味に影響するものとして、ペン先の厚さとペン先の素材です。

ペン先の厚さ

ペン先の厚さが厚いほど硬く、薄いほど軟らかくなります。また厚いほど強度が高くなり、薄いと強度が落ち壊れやすくなります。

ペン先全体が均一の厚さで出来ているのではなく、固定部は厚くして強度を保ちながら、弾力部をハート穴からペンポイントに向かって徐々に薄くしてペン先が軟らかくしなるように加工されています。

素材

鉄ペンと金ペン

ペン先の素材によりステンレススチール製のものを鉄ペン、金製のものを金ペンと呼んでいます。

鉄ペンは比較的安価で購入することが出来ます。安いものだと300円程度からあります。

高級万年筆といわれるものの多くは金ペンです。

万年筆で使われる金は14金、18金、稀に21金が使われます。

数字が大きいほど金の含有率が高くなります。

またこの数字が大きいほど万年筆の値段も高くなる傾向にあります。

鉄ペンと金ペンの違い

一般に金ペンが軟らかい書き味になり、金の含有量が多いほど軟らかくなるといわれています。

これは金がステンレスに比べて軟らかくしなりやすいからです。

でも金ペンであればどれも軟らかいかというとそうではありません。

先に書いたように構造的なものが書き味に大きく影響するので、金ペンでも硬い書き味のものもあります。

また逆に鉄ペンでもよくしなって書きやすい万年筆というのもあります。

写真左がペリカン「M205 クラシック デモンストレーター」鉄ペンです。

写真右がプラチナ「#3776 センチュリー」金ペンです。

ペリカンのペン先は鉄ペンですが、かなりしなやかな書き味です。

対してプラチナのペン先は金ペンですが硬くしっかりとした書き味です。

なぜ金ペンが重宝されるのか

一番の理由は腐食に強いという事です。

万年筆に用いられるインクは、昔は酸性を示すインク、古典インクが主流でした。

酸性のインクは金属を錆びさせたり溶かしたりしてしまう性質があります。

金は安定した金属で錆びにくいし特定の溶液でなければ溶けません。

ステンレスも錆びにくいという特性がありますが、ずっと酸にさらされると錆びてしまいます。

金を使ったペン先は、この特性から高い筆圧で書くなど物理的に壊さない限り長く使えるということですね。

国産の万年筆だと1万円程から金を使った万年筆を買うことが出来ますし、海外メーカーだと2~3万円から金を使ったものになってきます。

高価にはなりますが、万年筆を長く使うのであれば金ペンを選んだほうが間違いないですね。

ちなみに最近の水性染料インクは中性~弱アルカリ性のものが殆どで、鉄ペンでも問題なく使用できますよ。

ペン芯

ペン先の裏側にある樹脂製の部品をペン芯といいます。

ペン芯の形はメーカーそれぞれ独自に開発されており、上の写真のようにいろんな形をしています。

このパーツは本体側に空気を送ってインクをペン先に運ぶポンプのような役割をしています。

またコンバーターや本体吸入式の万年筆ではインクを吸い上げるときの入り口の役割があります。

さらに本体内のインクが気圧や気温の変化によって膨張したときにペン芯の中で圧を分散させてインクが外に漏れださないような役割も果たしています。

字幅の種類とバリエーション

字幅を大きく分けるとF(細字)、M(中字)、B(太字)に分けられます。

字幅には共通規格というものがないので、同じ表記でもメーカーによって違いますし、紙の質やインクの粘度によっても字幅は変わってきます。

さらにメーカーによってより細いEF(極細)や超極細(UEF)、細字と中字の中間のMF(中細字)、より太いBB(極太)、C(特太字)など、字幅の種類はかなり多いです。

国内メーカーと海外メーカーの比較

国内メーカーと比べ海外メーカーは字幅が太くなる傾向にあります。これは漢字などの画数の多い文字を使っているか、アルファベットのように画数の少ない文字を使っているかといった文化的な背景が関係しているかと思います。

参考までにUEF~Fを書き比べてみました。

上から「プラチナ・プレピー・EF(極細)」「プラチナ・プレジール・F(細字)」「セーラー・ハイエースネオクリア・F(細字)」「パイロット・カクノ・F(細字)」「プラチナ・#3776センチュリー・UEF(超極細)」「パーカー・IM・F(細字)」「ペリカン・M205クラシックデモンストレーター・EF(極細)」「モンブラン・145・F(細字)」です。

同じF(細字)だけ見ても、かなり違いがあります。

モンブランの145は本当にFなの?と言われそうなので軸に貼ってある字幅を表示しているシールの部分を載せておきます。

期待する字幅と実際に書いた時の字幅が違うとがっかりしますよね。

気になる万年筆の字幅が知りたい人は実際に文具専門店などに足を運んで試し書きをさせてもらうのが一番いいと思います。

店舗によっては、また万年筆のモデルによっては試し書きが出来ない場合もあるので、店員さんに聞いてみてくださいね。

また字幅の選び方ですが、用途によって字幅も違ってきますので、手帳などに小さな字を書く時にはEF(極細)~F(細字)、ノートなど大き目の字を書く時にはF(細字)~M(中字)という感じで選ぶようにしましょう。

万年筆は持ち方、ペンを持つ角度などによっても字幅が変わります。

万年筆の持ち方についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。

よかったら参考にしてください。

多様なペン先

いろんな用途に応じていろんなペン先があります。

その例として

  • 音符を書くために縦と横で違う太さの線が書けるミュージックペン先
  • ペン先が平らになっているカリグラフィーペン先
  • ペン先を寝かせるほど太い字を書けるセーラー万年筆の長刀シリーズ(筆DEまんねん)など。

その中でも僕は軟調の万年筆が特に大好きで、このパイロットのエラボー(左)とカスタムヘリテイジ912・フォルカン(右)を気に入って使っています。

どちらも他の万年筆と比べてペン先の形状が独特ですが、この形のおかげで他の万年筆よりもペン先が軟らかく開きやすくなっています。

どちらも14金を使った金ペンです。色がシルバーなのはロジウム加工が施されているからです。

ロジウム加工とは

ロジウム加工とは、ロジウムという金属でペン先の表面をコーティングする加工の事です。

よくアクセサリーなどに施される加工で、ロジウムは金よりも耐久性が高く、ペン先を腐食や摩耗から守ってくれます。

また白く輝かせることで美しさを演出するといった目的もあります。

フォルカンで字を書いてみました。力の入れ方によってペン先が開き、字幅を変えることが出来るんです。

ただ注意する点として、あまり高い筆圧で書き続けるとペン先が壊れてしまうので、筆圧が高い人にはおすすめできません。でもこの軟らかさに慣れるとすごく楽しい万年筆です。

最後に

ペン先は各メーカーの技術の高さが分かるパーツであり、メーカーの個性がでるパーツでもあります。

万年筆を買おうと思っている方は、まずペン先の情報を確認してみてください。

皆さんの万年筆選びの一助になれば幸いです。

最後まで読んでくれてありがとうございました。

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